研究概要 |
概日システムは、分子時計が支配するゲノムワイドな生命過程の統合制御系である。その機能不全は睡眠障害、メタボリックシンドローム、癌、神経・精神疾患などの憎悪に関わっている。申請者は、時計制御転写因子BMAL1を日周性にリン酸化するプロテインキナーゼとしてCK2を同定し、BMAL1の修飾による転写制御が哺乳類概日システムに必須の過程であることを解明している(Nat Struct Mol Biol 2009, Nature 2007, Science 2005)。本研究の目的は、概日システムを司る細胞内情報伝達系(日周性シグナロソーム)、とくにCK2をコアとした蛋白質リン酸化オシレータによる時間特異的・周期的な統合制御システムの構成と生理的意義を解明することである。具体的には、I) CK2によるリン酸化がBMAL1の日周性修飾を統合的に制御する。II) CK2をコアとした蛋白質リン酸化オシレータの活性振動機構を明らかにする。I,IIで得られた知見を土台にして、III) 蛋白質リン酸化オシレータが制御する日周性シグナロソームの生理的意義として、発癌プロセスへの関与を明らかにする。IV) 時計同調系からの蛋白質リン酸化オシレータへの入力系への関与を明らかにする。 本年度は、初年度から引き続き、CK2をコアとした日周性リン酸化オシレータの統合的な役割を解明し、CK2活性の日周期変動機構に時計制御蛋白質との周期的相互作用が関与していることを示した(投稿準備中)。熱ショック刺激(PLoS ONE 2011)、癌などの様々な疾患のプロセスに関与する活性酸素による細胞死を起こす手前の臨界条件の酸化ストレス刺激により、概日リズム同調が起き、ストレスに対する細胞の生存の為のシグナリングにCK2が統合する概日システムと熱ショック応答系、抗アポトーシス系、抗酸化系が構成するシグナロソーム関与していることを解明した(PLoS ONE 2013)。
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