研究課題/領域番号 |
23590286
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
舩橋 利也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70229102)
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研究分担者 |
長谷 都 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20450611)
杉山 仁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (70301596)
小倉 裕司 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (90509952)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | AMPA / 性差 / 性周期 / 海馬 / LTP / パッチクランプ / 受動的回避学習 / Y迷路 |
研究概要 |
本年度は、学習成立のメカニズムに性的二型性が存在し、それはAMPA受容体のサブユニット構成の違いによるもので、その結果、新たな学習成立が影響されるという仮説を検証するために、性周期を回帰しているWistar系ラットを用いて海馬CA1をターゲットに実験を行った。まず、通常の状態でRectification Index (RI, AMPA -60 mV/+40 mV) を測定したところ、発情前期と非発情期との間に有意な変化は認められなかった。次に、AMPA/NMDA比をもとめたところ、発情前期でも非発情期でも受動的回避学習により有意に比が上昇した。受動的回避学習は、本来暗室を好み明るい部屋を嫌う習性がラットにあるが、電気ショックを避けるために明るい部屋にとどまるようになる、という海馬依存性の学習課題である。次にシェファー線維を0 mV+3 Hzで電気刺激して、海馬CA1細胞のlong-term potentiation(LTP)の誘導を観察した。発情前期でも非発情期でもLTPは惹起されたが、事前に受動的回避学習をしておくと、発情前期ではLTPが起らない(LTPの飽和)ことが観察された。一方、海馬のサンプルからウエスタンブロットによりAMPA受容体のサブユニットの構成を調べたが、性周期による有意な変動は認められなかった。従ってシナプス分画にするなど膜に提示された蛋白を抽出する事が重要と思われた。以上、性周期によって海馬機能が変動する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的は、学習機序が性的二型性を示す事を明らかにするために性周期中の学習機序の変動を明らかにする目的で遂行され、少なくとLTPにおいて性周期で変動する可能性が示唆された。一方、ウエスタンブロットは分画にする必要性等が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
このまま継続して研究を行っていくが、当該年度は若干試薬やその他の消耗費が安くおさまったこと、年度末に学会があり学会出張費等の支出が当該年度を超えた事、等により、次年度以降に使用する事となったが、研究遂行上は、全く問題がない。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)性腺ホルモンの役割を明らかにするために、エストロジェンとテストステロンに焦点を当てる。精巣摘除群と精巣摘除後にテストステロンを補充した群、卵巣摘除群と卵巣摘除後にエストロジェンを補充した群、合計4群でパッチクランプ法により、rectification index、AMPA/NMDA比、LTPを検討する。この実験から、テストステロンがあることにより雄型の学習成立メカニズムがあるのか、エストロジェンにより雌型の学習成立メカニズムがあるのか、明らかになる。恐らくはエストロジェンにより雌型となると想像している。もしそうならば、精巣摘除してエストロジェンを補充して雌型の学習成立メカニズムが獲得できるか、調べる。2)生直後のホルモン環境の影響、すなわち、脳の性分化の影響を調べるために、生まれてすぐにテストステロンもしくはエストロジェンを処置した雌性ラット群、精巣を摘除した雄性ラット群で、パッチクランプ法により、rectification index、AMPA/NMDA比、LTPを検討する。この実験から、脳の性分化が、雄型、雌型の学習成立メカニズムにどのような影響を与えているか、すなわち、性腺ホルモンの感受性がいつ形性されるのか、明らかになる。3)同じ様な条件で、ウエスタンブロットによりAMPA受容体の構成を調べる。
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