研究課題/領域番号 |
23590288
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
西村 直記 愛知医科大学, 医学部, 講師 (40278362)
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キーワード | 模擬宇宙環境実験 / 人工重力負荷 / 運動負荷 |
研究概要 |
申請者らは、宇宙飛行などの微小重力環境曝露後にみられる宇宙デコンディショニングを予防する対抗措置として、半径2mの短腕式遠心機を用いた人工重力負荷と下肢エルゴメータ運動負荷を組み合わせた装置を作成した。本装置を用いた対抗措置を地上での模擬宇宙環境(-6°ヘッドダウンベッドレスト:-6°HDBR)実験中に、1日に積算で30分間行わせたところ、-6°HDBR後の宇宙デコンディショニングをほぼ予防できるとの結果を得たことから、国際宇宙ステーション(ISS)滞在中に宇宙飛行士に施行することを提案した。しかしながら、ISSでの運用施設のスペースの関係から、本装置(半径2m)をより小型化(半径1.4m)する必要性が生じたため、ISS搭載予定の人工重力負荷+下肢エルゴメータ運動負荷装置と同様のディメンションに改造し、本年度に実施予定であった-6°HDBR実験を施行した。6名の健康な男性を被験者とし、10日間の-6°HDBRを行わせた。6名の内、3名を対抗措置群(人工重量負荷+運動負荷群)、残りの3名を対照群に分け、対抗措置群には、1日に積算で30分間の人工重力負荷+運動負荷を連日行わせた。結果、起立耐性の指標となる耐Gスコアを対抗措置群と対照群で比較すると、対照群では-6°HDBR後に耐Gスコアが低下し、起立耐性の低下が認められた。他方、対抗措置群では-6°HDBR後に耐Gスコアが増加し、起立耐性が向上したことから、本研究で用いた対抗措置は-6°HDBR後にみられる起立耐性低下の予防に有効であることが明らかとなった。しかしながら、骨代謝系デコンディショニングを予防するには対抗措置の強度が不十分であることや、-6°HDBRの期間がやや短い可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画では、20日間の-6°HDBR実験を行う予定であったが、実験施設の関係から10日間の-6°HDBR実験を実施し、新たに改良した人工重力負荷+運動負荷装置が宇宙デコンディショニングに対して有効であるか否かについて検討した。その結果、10日間の-6°HDBR期間中に本装置を用いた対抗措置を連日(30分/日)行わせることで、宇宙飛行後にみられる宇宙デコンディショニングの一つである起立耐性の低下を予防できる可能性が示唆された。これまでの我々の実験結果等から、神経前庭系や環器系のデコンディショニングが起きるまでには3~5日間、筋・骨格系や骨代謝デコンディショニングは約20日と言われている。今回は実験施設の関係から、-6°HDBR実験の期間を10日間で終了せざるを得なかったことから、循環器系においては十分な変化が得られたかもしれないが,筋骨格系や骨代謝系においては、十分なデコンディショニングが生じる以前に実験を終了せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回は実験施設の関係から、-6°HDBR実験の期間を10日間で終了せざるを得なかったことから、将来的には20日間以上の-6°HDBR実験を行い、本装置を用いた対抗措置の効果を実証する必要があると思われる。しかしながら、長期間の-6°HDBR実験の実施に際しては、多額の費用や実験施設の確保が必要不可欠であることから、次年度のみでの実施は困難であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回の実験結果から、骨代謝デコンディショニングに対する予防効果が十分とは言えなかったが、本装置で用いたエルゴメータ運動以外にも、プッシュプルの様な踵骨や椎骨に強い衝撃を加える運動方式が必要であるかもしれない。 次年度では、本装置の使用により筋・骨格系や骨代謝系にどのぐらいの負荷が生じているのかを検討するための実験を行い、その際に生じた被験者への謝礼金に当てる。また、もし本装置に更なる改良が必要となった際には、その改良費用として算出する。
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