研究課題
プロスタノイドは、プロスタグランジン (PG) とトロンボキサンよりなる生理活性脂質であり、多種類のその受容体が心臓に発現している。しかし、心疾患の病態形成におけるプロスタノイドの役割には不明な点が多い。本研究の目的は、プロスタノイドの虚血心臓保護作用の情報伝達系を解明することにある。まず、プロスタノイドの心臓に対する直接作用を解析するために、マウスから摘出した心臓の大動脈にカニューレを装着し栄養液を供給する、ランゲンドルフ式灌流心を用意し、栄養液供給の途絶-再開をすることにより心臓の虚血-再灌流状態を作成した。この操作の中で、虚血前と虚血後に心臓をサンプリングし、DNAマイクロアレイ解析を行った。ランゲンドルフ式灌流心への虚血-再灌流負荷施行前のサンプルについて、野生型マウスとプロスタノイド受容体欠損マウスとで比較検討を行った。その結果、いくつかの遺伝子発現について野生型マウスと欠損マウスで発現量の違いが認められた。これは、構成的に産生されているプロスタノイドが、その受容体を介して虚血保護因子の発現に関与している可能性を示している。さらに、虚血-再灌流負荷を加えた後のサンプルについても解析を行ったところ、虚血前には野生型と遺伝子欠損マウス間で発現に差がなかったいくつかの遺伝子について差が認められた。これは、虚血-再灌流負荷時に発現したプロスタノイドが虚血保護因子の発現に関与している可能性を示している。
2: おおむね順調に進展している
プロスタノイドの心臓における直接作用を解析するため、マウスの摘出灌流心を用い、虚血-再灌流負荷を加えた心臓についてマイクロアレイを行い、野生型マウスとプロスタノイド受容体欠損マウスとで、遺伝子発現の違いについて比較検討を行った。その結果、いくつかの遺伝子の発現量に違いを見いだすことができた。
前年度に得られた結果を基にしてEx vivo 実験で変化のあった因子についてReal Time RT-PCR やウェスタンブロット解析を行う。また、 in vivo においても同様の変化が起こっているか解析する。 in vivo 心筋梗塞モデルとしては、マウスを麻酔・人工呼吸下に置き、開胸してその左冠動脈前下行枝を一定時間結紮する。ついで、血流を再開通して虚血-再灌流障害を惹起する。これらの処置の間、経時的に心臓を摘出し解析を行う。
前年度と違う条件での DNA マイクロアレイシステム解析、Real Time RT-PCR 解析用試薬、蛋白質産生量測定用試薬および動物実験用手術用具などに使用する予定である。また、関連学会へ参加し、発表や情報収集を行うための費用に使用する予定である。
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臨床検査
巻: 56 ページ: 145-150
血栓と循環
巻: 20 ページ: 4-8
Kidney International
巻: in press ページ: in press