研究課題
動脈硬化疾患患者では血管を構成している血管平滑筋細胞が何らかの原因で脱分化し、細胞遊走により血管内で肥厚を形成し、その結果、血管を狭窄させる。本研究では研究代表者が発見した血管平滑筋細胞の脱分化に関与するマイクロRNA(miRNA)を基にその脱分化機構を解明することに主眼を置き、基礎から臨床への架け橋となる研究を目指して下記の研究を遂行する。23年度は「動脈硬化疾患での血管平滑筋細胞と血管内皮細胞の連携によるmiRNAの遺伝子解析」「脱分化細胞から放出されるエキソーム解析」に重点を置いて研究を遂行した。ヒト血管平滑筋細胞の脱分化で変動するmiRNAと発現遺伝子プロファイル解析より遺伝子発現カタログを作成し、バイオインフォマティクスの手法により解析を行いデータベースの構築を行った。発現遺伝子とmiRNAの変動を同時に検出する事によりmiRNAの変動にリンクして変動する遺伝子も同時に検出する点において、単にmiRNAの変動を見る従来の手法より多くの情報が得られる。このデータベースより脱分化に伴い変動する遺伝子発現ネットワーク制御機構に関わる5つの分子の解析を進めている。また、ウサギ血清やヒト大動脈血管平滑筋細胞より培地中に放出されるエキソソームの遺伝子ライブラリーの作成も行い、その解析を進めている。ヒト正常血管平滑筋細胞の培地中に放出されるエキソソーム中に特別な分子が同定できれば新規のバイオマーカーの開発や遺伝子治療に向けての新しい途が開かれると期待される。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は東日本大震災に伴う東電の計画停電で2台の超低温フリーザーが故障し、貴重な多数のサンプルや細胞を失った。その為に秋までは研究もなかなか着手出来ない状況が続いたが、なんとかヒト大動脈血管平滑筋細胞の脱分化に伴う発現プロフィールの作成が完了した。また、ウサギ血清やヒト大動脈血管平滑筋細胞より培地中に放出されるエキソソームの遺伝子ライブラリーの作成も順調に進んでいる。
24年度は「動脈硬化疾患での血管平滑筋細胞と血管内皮細胞の連携によるmiRNAの遺伝子解析」「脱分化細胞から放出されるエキソーム解析」に重点を置いて研究を遂行した。今後は更に研究計画に基づき、脱分化に伴い変動する遺伝子発現ネットワーク制御機構に関わる遺伝子の機能解析、主にmiRNAの標的分子をバイオインフォマティクスの手法とヒト大動脈血管平滑筋細胞を用いたmiRNAのダウンレギュレーションおよび強制発現に伴う遺伝子の解析の両面から行う。さらにエキソソームの遺伝子ライブラリーの遺伝子に関する解析も引き続き行う。
昨年度は震災の影響で動物実験が行えず、24年度は動物用いた個体群での解析を進めるため動物の購入とその解析試薬に23年度分を使用する。また、新しい最新知見を得るために関連学会に情報収集に出かける。
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