研究課題/領域番号 |
23590295
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 彰男 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30282388)
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キーワード | 血管平滑筋 / マイクロRNA / エキソーム |
研究概要 |
動脈硬化症疾患の患者の血管内部では血管平滑筋細胞が脱分化により遊走型に形質転換し傷害部位に蓄積し、肥厚形成により動脈硬化疾患の一因となっている。どのようにして血管平滑筋細胞が脱分化するのか?は未だによく分かっていない。本研究では最近注目されている細胞が放出するエキソーム中に含まれるマイクロRNA(miRNA)に着目してこの脱分化機構を解明することに主眼を置いている。血管平滑筋細胞の脱分化に伴い細胞内に放出されるエキソームを単離精製し、エキソーム中に含まれるマイクロRNAをマイクロアレイ法により細胞遊走を促進するmRNAを検出した。現在、それらのエキソームに含まれるマイクロRNAの個々の量比変化などを幾つかの血管平滑筋細胞株で詳細に検討している。また、脱分化により細胞遊走能を上昇させた4つのmiRNAが細胞内でどのような遺伝子を標的にしているのかをマンチェスター大学のmiRBaseおよびmiRandaなどのデータベースを用いてバイオインフォマティクス的手法により標的遺伝子を検索したところ、細胞遊走や収縮に関わる遺伝子が候補としてあげられた。現在、そのmiRNAを遺伝子導入して発現を調べている。本研究を遂行している中でニコチンが血管平滑筋を脱分化させることが明らかになり、血管平滑筋細胞にニコチンを投与した際に培地中に放出されるエキソームに関しても単離精製して、その中に含まれているマイクロRNAに関しても詳細に調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培地に放出されるエキソーム中のマイクロRNAの検出が安定せず、その方法の樹立に手間取った。
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今後の研究の推進方策 |
将来的には動脈硬化疾患モデルマウスの血漿中に特異的に含まれる新規miRNA を探索し、血管平滑筋培養細胞で得られたエキソーム中で見つかったものと比較し、それらが血管平滑筋細胞の脱分化に関わるか否かを検証する。昨年度に達成できなかった脱分化を促進させる候補miRNAあるいはそのanti-miRNAを細胞に導入して、東レ3D-Gene Human DNA chip等を用いて対照群の細胞と比較して変動遺伝子を特定する。また同様に両者の細胞から蛋白質を抽出液し、2色蛍光色素でラベル後、Typhoon9210を用いて2D-DIGE(二次元蛍光ディファレンシャル電気泳動)によりゲルの異なるスポットを切り取り、ゲル内にて還元アルキル化/トリプシン消化を行う。得られたペプチド断片は日立液体クロマトグラフ質量分析装置(NanoFrontier eLD;nanoLC LIT-q-TOF MS)にてPMF法にて蛋白質の同定を行う。 時間の目処がたてばApoE欠損動脈硬化モデルマウス(KOR-Apoeshl)と正常マウスを8,17,26,51週齢時に非絶食下で採血を行い、ヘパリン血漿を分離後、血液生化学テスト(総コレステロール、トリグリセライドなど)を測定すると同時にExoQuick kit (System Biosciences)を用いてエキソソームを単離し、エキソソーム中のmiRNAを精製する。この実験から血管平滑筋細胞の脱分化には関わらないが動脈硬化疾患モデルマウスの血漿中に特異的に含まれる新規miRNA を探索し、血管平滑筋培養細胞で得られたエキソーム中で見つかったものと比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費は特に大型の機器等はありません。消耗品費は細胞培養や遺伝子解析等に必要な試薬などを購入し、最終年度ですので研究成果の学会発表に主に旅費を使用したいと思います。人件費は解析や培養細胞のメンテナンスに実験補助を計画しています。その他の項目としては論文の投稿費用を考えています。
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