研究課題
本研究において動脈硬化性疾患では血管平滑筋細胞が何らかのシグナルの入力により、中膜の構成要素である分化した収縮型の血管平滑筋細胞から脱分化した増殖・遊走型の細胞へとリモデリングが提唱されている。このリモデリングには多くの遺伝子の変動が我々の研究で明らかとなっている。とりわけ、世界的に注目されているのがマイクロRNAによる遺伝子発現のファインチューニングである。本研究ではヒト初代正常血管平滑筋細胞(HSMCs)に脱分化を起こさせる血小板由来成長因子(PDGF)やニコチンを投与すると、マイクロRNAが培養液中にエキソソームに包埋された状態で放出されていることをマイクロアレイ解析により明らかにした。PDGFとニコチンを暴露した際の放出されるマイクロRNAには共通したものもが多く含まれている。現在、このエキソーム中に含まれるマイクロRNAがどの様な標的遺伝子をファインチューニングしているかを個々のマイクロRNAの機能に関して検討を加えている。また、本研究ではタバコが動脈硬化性疾患の危険因子であることから、その煙に含まれる主成分のニコチンに関して、収縮型から増殖・遊走型の細胞へとHSMCsのリモデリングについて検討した。その結果、ニコチンはHSMCsに発現しているニコチン性アセチルコリン受容体および三量体G蛋白質共役型受容体である嗅覚受容体のホモログを介して、細胞内の遺伝子構成を収縮型から増殖・遊走型へとスイッチングさせている事がわかった。このことからニコチン自体が動脈硬化性疾患へ危険因子となっている可能性が明らかとなった。本研究の結果は、現在、禁煙治療のために利用されているニコチンガムやニコチンパッチ自体に動脈硬化性疾患を惹起あるいは促進させる危険性がありさらなるメカニズムの検討が示唆された。
3: やや遅れている
講座の主任教授が替わり、それに伴い循環器系の薬理学の系から外科系の腫瘍治療学へと改組となった。研究室の大幅な改築と研究環境が変わったために本研究は遅れている。しかしながら、本年度から再び研究を推進出来る環境になったので研究の遅れを取り戻している。
本研究では新しい多くの発見があり、現在、データーベースへの登録、得られた知見の論文への準備および投稿を行っている。今後は得られた遺伝子の中で動脈硬化性疾患のバイオマーカーとなり得るかに関してさらなる検討を加えたいと考えている。
計画していたエキソソームのマイクロRNAのマイクロアレイ実験が遅れたため。既に実験は完了しており、本研究で得られたいくつかの知見を学会発表および論文投稿するに当たり英文校正などの投稿費用に充填する。
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