研究課題
1)RGS蛋白質による血管作動性受容体シグナルの抑制効果: 血管作動性ペプチドであるアンジオテンシンII 受容体AT1、エンドセリン受容体ETAおよびバソプレシン受容体V1aを293T細胞に安定発現した細胞を作成した。ETAおよびV1a受容体シグナルに対するR4ファミリー蛋白質(RGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS8、RGS16)の抑制効果の比較を行った。その結果、AT1受容体シグナルの抑制と同様に、ETAおよびV1a受容体シグナルについても、RGS3とRGS8がRGS2と同等以上に強力に抑制効果を示した。2)各RGSのN末端部欠損変異体の抑制効果の検討:N末端部を欠損したmycタグ付きのRGSドメイン部のみの変異体を作製した。3種類の受容体シグナルについて、N末端部欠損のRGS蛋白質ドメイン部の抑制効果を全長RGSと比較した。その結果、RGS2全長では強力な抑制作用を示すが、N末端部のないRGS2ドメインは著しく減弱した。一方、RGS3ドメインおよびRGS8ドメインは全長の抑制と同程度に強力に抑制した。3)RGS8ドメインとRGS5ドメインのキメラ変異体の抑制効果の解析:RGS8ドメインがなぜ強力にAT1受容体シグナルを抑制するかを解明するために、抑制効果の小さいRGS5ドメインとのキメラ蛋白質を作製した。RGSドメイン部を3分割し、RGS8ドメイン変異体(885、858、588)およびRGS5ドメイン変異体(558、585、855)を作製した。RGSドメイン885は抑制活性が弱く、RGSドメイン558は活性が強かった。(858、588)はRGS8、(585、855)はRGS5とほぼ同じであった。つまり、RGS8ドメイン部の3番目の一番C末端部が強い抑制作用の発現に重要であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
申請時にすでに予備データがあったことによるが当初の計画以上に順調に進展している。また、平滑筋に発現する他のRGSの役割の検討から、予想外のRGS分子種によるアンジオテンシン受容体シグナルの抑制効果が得られた。そのため、解析するRGS蛋白質を7種類に増やし、また、血管作動性受容体をアンジオテンシン受容体AT1のみならず、エンドセリン受容体ETAとバソプレシン受容体V1aのシグナルについても検討し、研究計画の拡大をはかった。
GPCRシグナル抑制因子であるRGS2、RGS3、RGS8がアンジオテンシンAT1受容体シグナルを強力に抑制することが判明した。RGS3とRGS8については、そのRGS3とRGS8ドメイン部のみでも強力な抑制作用を持つことが判明した。また、RGS8ドメインを3分割した一番C末端部が抑制活性の発現に重要な役割を果たすことが判明した。そこで、平成25年度は、RGS2およびRGS8がいかにして強いAT1受容体シグナルの抑制活性を発揮するか、AT1受容体やスピノフィリン(SPN)との結合活性を検討する。また、RGS8ドメインのC末端部がAT1受容体やスピノフィリンや他の蛋白質と結合するかどうかを検討する。
該当なし
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