研究課題/領域番号 |
23590302
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
塩田 直孝 島根大学, 医学部, 准教授 (60206050)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 肥満細胞 |
研究概要 |
平成23年度は、コラーゲン誘発関節炎マウスを用いて肥満細胞の増殖活性化と関節炎の発症進展との関連性を明らかにし、更に肥満細胞を標的にして、関節炎の新しい薬物治療方法を開発することを目的に研究を実施した。肥満細胞脱顆粒抑制薬であるトラニラストをコラーゲン誘発関節炎マウスに、関節炎発症後3週間の時点より8週間連続経口投与した結果、関節炎の進展を有意に抑制できた。また関節炎が発症すると、炎症性肥厚滑膜組織中にTNF-alpha陽性の肥満細胞数が著明に増加するが、トラニラスト投与により肥満細胞数は顕著に減少した。更にトラニラスト投与により、関節炎組織中のTNF-alpha、Chymase、Tryptase、SCF、及びIL-6mRNAレベルは減少し、一方でIL-10のmRNAレベルは増加した。重要な事に、トラニラスト投与により破骨細胞数も有意に減少し、Cathepsin-K、RANK、及びRANKLのmRNAレベルも有意に低下した。興味深い事に、増殖した肥満細胞が破骨細胞の近傍に位置している組織学的所見も認められた。以上の結果より関節炎の病態発症機構において、肥満細胞が関節炎の発症進展と破骨細胞の増殖活性化に重要な役割を担っていることを始めて明らかに出来た。関節リウマチの治療方法は近年大きく進歩しているが、未だに重症例に対する治療方法が確立されておらず、また治療薬の強い毒性や極めて高い薬価が大きな問題になっている。私の研究成果により、関節リウマチの薬物治療方法の選択肢が広がり、既存の治療薬と肥満細胞脱顆粒抑制薬を組み合わせることで、より有効性と安全性の高い薬物治療方法を構築出来ると期待している。この成果は、平成24年3月に日本薬理学会総会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目標は、コラーゲン誘発関節炎マウスを用いて肥満細胞の増殖活性化と関節炎の発症進展との関連性を明らかにし、肥満細胞を標的にした新しい薬物治療方法を開発することであった。実際に平成23年度に、コラーゲン誘発関節炎マウスを用いて肥満細胞の活性化が滑膜組織の炎症と増殖を惹起し、また破骨細胞の活性化を介して骨破壊を促進することを明らかに出来た。また肥満細胞脱顆粒抑制薬であるトラニラストが関節炎の新しい治療薬になることも明らかにした。また、成果の一部を既に24年3月に日本薬理学会総会で発表できた。以上に結果より、目標はおおむね達成出来ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、コラーゲン誘発関節炎マウスを用いて、肥満細胞脱顆粒抑制薬であるトラニラストが関節炎の新しい治療薬になることを解明出来た。トラニラストは肥満細胞の増殖活性化を抑制する薬剤であり、肥満細胞の機能全体を抑制することで、関節炎の進展を抑制したと考えられた。肥満細胞は多様な因子を産生する多機能炎症細胞であり、次の課題として、肥満細胞用来の多様な因子の中で、どの因子が主体的な役割を担っているのかを明らかにすることも重要である。現在、肥満細胞由来のプロテアーゼの一つであるchymaseに注目して、chymase特異的阻害薬の関節炎に対する治療効果を検討中である。この解析により、肥満細胞が関節炎の病態発症機構に果たす役割を更に明確に出来ると期待している。更に平成24年度は、卵巣摘出後骨粗鬆症発症マウスを用いて肥満細胞の増殖活性化と骨粗鬆症の発症進展との関連性を解明する。また、卵巣摘出後骨粗鬆症発症マウスに肥満細胞脱顆粒抑制薬であるトラニラストとchymase特異的阻害薬を投与し、骨粗鬆症の進展抑制効果も検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、卵巣摘出後骨粗鬆症発症マウスを用いて肥満細胞の増殖活性化と骨粗鬆症の発症進展との関連性を解明する。平成24年度の研究費は、全額を主として実験動物と生化学及び分子生物学的解析に必要な試薬類の購入に使用する予定である。
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