研究課題/領域番号 |
23590302
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
塩田 直孝 島根大学, 医学部, 准教授 (60206050)
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キーワード | 肥満細胞 / 骨粗鬆症 |
研究概要 |
平成24年度は、骨粗鬆症発症モデルラットを用いて肥満細胞の増殖活性化と骨粗鬆症の発症進展との関連性を明らかにし、更に肥満細胞を標的にした骨粗鬆症の新しい薬物治療方法を開発する事を目的に研究を実施した。当初はマウスモデルを使用して研究を実施する予定であったが、骨解析にはラットの方が好都合であり使用動物をマウスからラットに変更した。ラットに低カルシウム食を持続的に投与すると、1週間経過頃より大腿骨の骨密度の低下が始まり、8週間経過後には著明な骨密度の低下を認めた。正常のラットの大腿骨の骨髄中には、成熟型の肥満細胞が少数存在しているが、骨粗鬆症を発症した大腿骨の骨髄中では、破骨細胞の増殖活性化と同時に、肥満細胞の著しい増殖活性化が認められた。増殖した肥満細胞は、破骨細胞の近傍にも多数存在し、肥満細胞から分泌放出された因子が、破骨細胞の機能に直接的に重要な影響を及びしている可能性が示唆された。次に、肥満細胞の増殖活性化を抑制出来るトラニラストを8週間経口投与したところ、骨髄中での肥満細胞の増殖が顕著に抑制されたのと同時に骨パラメーターの改善も認められた。以上の結果より、骨粗鬆症の病態発症機構に肥満細胞が重要な役割を果たしている可能性を明らかにすることが出来た。この結果は、薬理学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、骨粗鬆症モデルラットを用いて肥満細胞の増殖活性化と骨粗鬆症の発症進展との関連性を明らかにし、更に肥満細胞を標的にした骨粗鬆症の新しい薬物治療方法を開発する事であった。当初、予定していたマウスからラットを用いた研究に変更したが、実質的な影響は何も無く、むしろ解析がよりし易くなり好都合であった。研究の結果から、骨粗鬆症の病態発症機構に肥満細胞の増殖活性化が重要な役割を果たしている事を解明でき、またトラニラストが骨粗鬆症の新しい治療薬になる可能性を明らかに出来た。現在、肥満細胞由来の多様な因子の中のどの因子が重要な役割を担っているかを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画により、トラニラストを8週間連続経口投与して肥満細胞の増殖活性化を抑制すると、骨粗鬆症の発症進展を抑制出来ることを明らかにした。このことから、肥満細胞が骨粗鬆症の病態発症機構に関与する可能性を明らかにすることは出来たが、肥満細胞は多様な因子を産生する多機能炎症細胞であり、肥満細胞の中のどの因子が主体的な役割を果たしているかを解明することが必要である。現在、肥満細胞由来のプロテーゼの一つであるキマーゼに注目して、キマーゼの酵素活性を阻害出来るキマーゼ阻害薬を骨粗鬆症モデルラットに投与する研究計画を実施中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、骨粗鬆症ラットの研究計画を継続すると共に、培養細胞系を用いて、肥満細胞が破骨細胞の増殖活性化に及ぼす役割を解析し、肥満細胞による破骨細胞の機能制御の詳細なメカニズムを明らかにする予定である。平成25年度の研究費は、平成24年度に発生した未使用額150921円と合わせて、全額を主として実験動物と生化学及び分子生物学的解析に必要な試薬類の購入に使用する予定である。なお平成24年度に、未使用額150921円が発生した理由は、実験方法の効率化等の努力により、主に物品費の中で試薬類の購入費用が、当初の予定よりも少なく出来たことによる。この未使用金額は、昨今の急激な円安の影響で試薬類の価格の高騰が予想されるので、平成25年度の試薬類購入のための費用に使用する予定である。
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