研究課題/領域番号 |
23590303
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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キーワード | アルドステロン / ミネラロコルチコイド受容体 / 腎障害 |
研究概要 |
本研究の最終的な目的は、腎障害メカニズムにおけるミネラロコルチコイド受容体の役割について、その全容を解明することである。平成24年度は初年度平成23年度に引き続き、ミネラロコルチコイド受容体活性化による近位尿細管細胞の障害が、炎症を介する尿細管間質障害によって引き起こされるか否かについて検討を続けた。 全身GFP発現マウスに対してストレプトゾトシンを投与して糖尿病性腎症を生じ、あるいは5/6腎摘をおこない、テレメトリーシステムを利用して24時間血圧・心拍数を連続測定した。その後イナクチンで麻酔下に多光子レーザー顕微鏡によって近位尿細管部位の間質における白血球と血小板の動態を観察し、炎症の状態を可視化した。その結果、糖尿病の発症とともに近位尿細管を中心として自己蛍光発色を強く生じていることが観察された。また、赤血球の流れが障害されてマクロファージが集積しているなどの、微小循環障害にともなう炎症を生じていることが明らかとなった。組織学的検討でもSAβ-Gal染色による老化が生じており、腎組織中のp21, p53, sirt1, sirt2などの遺伝子・蛋白発現が増加していた。 これと並行して培養ヒト近位尿細管細胞において、ミネラロコルチコイド受容体の活性化が酸化ストレスを介して老化を生じており、TNF-α分泌が重要な役割を果たしていることが示唆された。 これらの研究結果の一部は、平成24年度にClin Exp Pharmacol Physiol誌やPLoS ONE誌に発表され、日本腎臓学会総会、日本臨床分子医学会、日本臨床高血圧フォーラムにて発表された。また、本研究に関連して、日本腎臓学会総会では大島賞を受賞した。尚、交付された助成金はすべて消耗品に対して使用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべてのデータが論文化されているわけではないが、動物実験も培養細胞実験もほぼ予定どおり実行され、十分な結果を得ることができた。また、平成24年度では一部のデータがClin Exp Pharmacol Physiol誌やPLoS ONE誌に発表され、日本腎臓学会総会、日本臨床分子医学会、日本臨床高血圧フォーラムにて発表された。さらに、本研究の業績が認められ、日本腎臓学会総会では大島賞を受賞することができた。 このように、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は平成24年度までで行った全身GFP発現マウスを用いた病態モデル動物を使用した腎老化メカニズムについて、引き続き検討をおこなう予定である。まず、テレメトリーシステムを利用して24時間血圧・心拍数を連続測定し、その後イナクチンで麻酔下に多光子レーザー顕微鏡によって近位尿細管部位の間質における白血球と血小板の動態を観察して炎症の状態を可視化し、前年度までに得られた病態の変化に加え、その他にも新しい病態が観察されないか否かについて検討する。さらに、培養ヒト近位尿細管細胞における実験により、ミネラロコルチコイド受容体活性化による細胞老化作用において、TNF-αによる経路を中心とした老化作用の詳細な分子生物学的メカニズムを検討する。 平成25年度はこれに並行して、腎障害の進展と血圧のDippingパターンの変化について、ミネラロコルチコイド受容体の役割について動物モデルで検討する。アデニン慢性投与によって腎障害生じたラットに高食塩を負荷し、食塩感受性高血圧を生じさせ、この際に生じる血圧のDippingパターンの変化に対するミネラロコルチコイド受容体の効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付された助成金はすべて消耗品(動物、培養細胞、ディスポーザル器具、遺伝子発現測定キット、蛋白発現測定キットなど)に対して使用する予定である。
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