研究課題
急性心筋梗塞は日本人の主要な死因の一つである。急性心筋梗塞による死亡のほとんどは患者が病院に辿り着く前に生じることから、当該疾患の征圧には発症予防が極めて重要である。しかし、実験に有用な自然発症急性心筋梗塞モデルが全く無いために、その予防薬の研究開発は大きく立ち後れている。我々は、過去に、NO合成酵素(NOSs)完全欠損(triple n/i/eNOSs-/-)マウスが急性心筋梗塞を自然発症することを報告した。しかし、このマウスの急性心筋梗塞の発症には1年もの長期間を要し、創薬研究に有用ではなかった。慢性腎臓病患者は早期に急性心筋梗塞を合併し、基礎研究では腎臓亜全摘動物が慢性腎臓病モデルとして使用されている。これらの背景を踏まえて、本研究では、創薬に有用な自然発症急性心筋梗塞モデルを開発するために、triple NOSs-/-マウスにおける腎臓亜全摘の効果を検討した。野生型マウスおよびtriple NOSs-/-マウスを実験に使用し、2/3腎臓摘出術あるいは偽手術を施行した。野生型マウスでは、2/3腎摘は生存率に影響を与えなかった。しかし、triple NOSs-/-マウスでは、2/3腎摘は生存率を著明に低下させ、ほぼすべてのマウスが術後4ヶ月以内に死亡した。剖検では、84.6%の2/3腎摘 triple NOSs-/-マウスが心筋梗塞で死亡していた。責任冠動脈には、血栓、内膜肥厚、外膜線維化などヒト急性心筋梗塞患者の冠動脈に酷似した動脈硬化の所見が認められた。冠危険因子の検索では、血圧値、血漿総コレステロール値、及び空腹時血糖値が有意に増加していた。更に、血中骨髄由来血管平滑筋前駆細胞(動脈硬化促進因子)の有意な増加が認められた。2/3腎摘triple NOSs-/-マウスは、創薬に資する世界初の自然発症急性心筋梗塞モデルである。
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