研究課題/領域番号 |
23590306
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉栖 正典 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60294667)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病性微小血管障害 / c-Src / MAPキナーゼ / アンジオテンシンII / 血管平滑筋 / 細胞遊走 |
研究概要 |
脈管作動物質であるアンジオテンシンII (AII) は血管平滑筋細胞の増殖と遊走を引き起こし、糖尿病性微小血管障害に関与している可能性がある。以前に我々は、AII起因性のSrcチロシンキナーゼ、extracellular signal-regulated kinases 1/2 (ERK1/2) 及びc-Jun N-terminal kinase (JNK) の活性化、並びにrat aortic smooth muscle cell (RASMC) の遊走をAII受容体拮抗薬オルメサルタンが阻害したことを報告した。また、Srcチロシンキナーゼ阻害剤PP2はオルメサルタンと同様にAII起因性のRASMCの遊走を強力に阻害した。そこで、AII起因性のRASMCの遊走におけるSrcチロシンキナーゼの関与について詳細に検討する目的で、Src siRNAをRASMCに遺伝子導入して実験を行った。 その結果、Src siRNAをRASMCに遺伝子導入するとSrcチロシンキナーゼの発現量が約90%抑制された。そこでAII起因性のERK1/2及びJNKの活性化に対するSrc siRNAの阻害効果を検討した。その結果、Src siRNAはERK1/2活性化に対してよりもJNK活性化に対してより強い阻害効果を示した。さらに、AII起因性のRASMCの遊走に対するSrc siRNAの効果を検討すると、Src siRNAはPP2と同様にAII起因性のRASMC遊走に対して強力な阻害効果を示した。 これらの結果は、Srcチロシンキナーゼの直接的な阻害がAII起因性の血管平滑筋細胞の遊走に対してERK1/2やJNKを阻害するよりも効果的である可能性を示している。Srcチロシンキナーゼの薬理学的又は遺伝子的な阻害が、糖尿病性微小血管障害などAIIが関与する病態に対する新たな治療法になる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病における治療は、血糖値を降下させる糖尿病そのものの治療に加えて、糖尿病合併症の治療も同時に視野に入れてなされるべきである。脈管作動物質であるアンジオテンシンII (AII) は血管平滑筋細胞の増殖と遊走を引き起こし、糖尿病性微小血管障害に関与している可能性がある。 今年度の我々の研究で、ERK、JNKやSrcチロシンキナーゼの薬理学的・遺伝子的な阻害が、AIIが関与する微小血管の新生を抑制する可能性が示唆された。糖尿病合併症にかかわる微小血管の新生を抑制するというアプローチで、ERK、JNKやSrc阻害薬が新たな糖尿病合併症の治療法になりうる可能性が示された。今年度の研究成果より、ERK、JNK阻害や、特にSrc阻害が糖尿病合併症の治療ターゲットになりうる事が確認され、この点でおおむね研究計画は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、Srcチロシンキナーゼの阻害や、ERK1/2やJNKなどのMAPキナーゼ阻害が、糖尿病性微小血管障害に関与する可能性のあるアンジオテンシンIIによる血管平滑筋細胞の遊走に対して効果的であることが示された。 このことより、MAPキナーゼやSrcチロシンキナーゼの薬理学的又は遺伝子的な阻害が、糖尿病性微小血管障害などAIIが関与する病態に対する新たな治療法になる可能性がある。今後はより直接的なMAPキナーゼおよびSrc阻害をめざし、ERK siRNA、JNK siRNAやSrc siRNAなどを用いた臨床的な遺伝子治療法の開発に研究を進める予定である。 その目的のため、1)糖尿病モデルラットの臓器、器官を用いたin vivoでの微小血管障害を証明し、ERK siRNA、JNK siRNA、Src阻害薬やSrc siRNAなどによる糖尿病合併症の改善と心血管病予防効果を検討する。 さらに、2)実際の臨床病態に近い糖尿病モデルラットに閉塞性動脈硬化症(ASO)を合併した疾患モデル動物を作成し、ERK siRNA、JNK siRNA、Src阻害薬、Src siRNAなどによる病態改善効果を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、上記1)で述べた糖尿病モデルラットの臓器、器官を用いたin vivoでの微小血管障害を証明し、ERK siRNA、JNK siRNA、Src阻害薬やSrc siRNAなどによる糖尿病合併症の改善と心血管病予防効果を検討する。研究費は、研究支援者の雇用費に使わせていただくほか、モデル動物作成のためにも支弁する予定にしている。研究費の内訳に関しては、研究支援者の雇用費に100万円、モデル動物作成費用に10万円、その他の試薬、実験用消耗品の購入費用に10万円を予定している。
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