研究課題/領域番号 |
23590307
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
笹川 展幸 上智大学, 理工学部, 教授 (20187107)
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キーワード | exocytosis / chromaffin cell / amperometry |
研究概要 |
シンタキシン1Aノックアウト(KO)マウスおよびR151Gシンタキシン1A(CaMKIIとの結合能欠損)ノックイン(KI)マウス由来の副腎クロマフィン細胞をターゲットとし、微小炭素線維電極を用いたアンぺロメトリィー法により、開口分泌キネティクス指標およびスパイク出現頻度の刺激に伴う時間的変化をwild type(WT)マウス由来細胞からのデータと比較検討することにより、特にアミン系神経伝達に重要なシンタキシン1A分子の役割を解析した。前年度においてKI,KOにおいてKClおよびAChによる刺激時に開口頻度と拡散速度の指標において減少傾向が認められた。今年度は開口頻度減少の詳細を解析する目的で持続的刺激(3分間)における開口頻度の変化をWTと比較した。KI,KOにおいて刺激後0-1分間における開口頻度には有意な変化は認められなかったが、刺激後1-3分における開口頻度は有意な減少が認めれれた。この結果はすでに分泌準備が完了したrelease ready poolからの分泌はKI,KOにおいて影響は認められないが、持続的分泌を維持するための分泌顆粒の供給機構に障害がある可能性を示唆しており、興味ある知見である。また、副腎クロマフィン細胞からの分泌反応ではカルシウムの細胞内への流入が重要な因子であることから、細胞内遊離カルシウム濃度の変化を蛍光試薬(Fura-2)を用い測定した。KI,KO細胞における静止時また刺激時の細胞内遊離カルシウム濃度の変化はWT細胞と有意な変化認められなかった。この結果は前記の開口頻度の減少が細胞内遊離カルシウムの減少によるものではないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はトランスジェニック(R151Gシンタキシン1Aノックイン、シンタキシン1Aノックアウト)マウス由来の副腎髄質クロマフィン細胞と黒質中脳由来のドパミンニューロンの両者を用い、アンぺロメトリィー法による開口頻度および開口過程のキネティクス解析法で、開口放出におけるシンタキシンの役割につき解析を進める予定であっつたが、黒質中脳由来のドパミンニューロンの順調な供給が困難であったため、神経系細胞の優れたモデルである副腎髄質クロマフィン細胞での解析を優先的に進めた。前年度からのドパミンニューロン調整法の改良(消化酵素の変更、消化時間の検討、材料のマウス数の増加等)の結果十分とはいえないが、アンぺロメトリィー法による単一細胞をターゲットとした検討が可能になりつつある。これらの改良と並行して多量に入手可能なWTマウス由来の黒質中脳由来のドパミンニューロンにおけるドパミンの開口放出をアンペロメトリー法で測定すべく検討した。 高カリウムによる脱分極刺激により、開口分泌のシグナルを検知できたが、その電流量はクロマフィン細胞で得られるシグナルの約1/50とかなり微弱なものであるため、現在ベーザルレベルのノイズを減少させる方法を検討している。今後KI,KOマウス由来のドパミンニューロンの調整収率の向上と合わせ、安定した開口頻度測定の実験系確立に努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
①ドパミンニューロンの順調な供給のために、トランスジェニックマウスの十分な供給、細胞調製と培養法の改良を引き続き行う予定である。 ②ドパミンニューロンにおけるドパミンの開口放出をアンペロメトリー法で安定して測定できるように、微小炭素電極の改良とベーザルレベルのノイズを減少させる方法を検討する予定である。 ③副腎髄質クロマフィン細胞での開口放出過程(ポアー形成機構からフルエクソサイトシス)などの各ステップおよびkiss and runの機構に注目しのシンタキシンによる調節機構の詳細な解析も引き続き行う予定である。開口放出過程のキネティクス解析では、WT由来細胞とKI由来細胞で得られたデータを比較すると、変化の傾向は認められるが、統計的に有意な結果が未だに得られていないため、例数を増やし検討を続けたい。 ④クロマフィン細胞およびドパミンニューロンの開口分泌調節、分泌顆粒の細胞内動態のダイナミクス調節における、シンタキシンに代表されるSNARE蛋白質、イノシトール多リン酸、および蛋白リン酸化酵素C (PKC)各アイソフォーム などによる調節機構にも注目して検討を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費:微小炭素繊維電極、培養用品、生化学的試薬、動物等の実験材料 アンペロメトリー法による開口分泌測定には微小炭素繊維電極は必須の電極であり、均一な感受性を持つ電極の自作は困難である為、既製品を購入することが本研究遂行の上に是非とも必要である。また、従来から使用していた微小炭素電極とは異なり、先端部の直径や研磨の有無が選択出来る微小炭素電極が他社から入手可能になったため、新たに購入する。その他、培養用品の購入、培養試薬・プラスミド作成・遺伝子導入試薬等の、生化学的試薬は必須である。 副腎髄質クロマフィン細胞やドパミンニューロン調整に必要なマウス等。
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