研究課題/領域番号 |
23590309
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
塚原 富士子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40119996)
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キーワード | 癌 / 薬理学 / 慢性骨髄性白血病 / Toll様受容体 / LPS |
研究概要 |
慢性骨髄性白血病の原因分子であるBCR-ABLは、細胞内で強いチロシンキナーゼ活性を発揮し、細胞増殖を促進、アポトーシスを抑制する。近年、BCR-ABL分子標的薬(イマチニブ等)が開発され、優れた治療効果を発揮している。しかしながら薬剤耐性の獲得により、治療困難な症例が報告されている。本年度の研究では、慢性骨髄性白血病の発症機構および薬剤耐性獲得機序におけるToll様受容体4(TLR4)の役割について以下の実験を行った。 TLR4の内因性リガンドとして作用することが報告されている構成型熱ショック蛋白質Hsc70の効果について検討した結果、Hsc70の効果は、大腸菌より精製した蛋白に結合しているlipopolysaccharide(LPS)の作用による可能性が高いことが示唆された。さらにLPSとイマチニブの相互作用についてTLR4を発現している白血病モデル細胞を用いて検討したところ、イマチニブによるBCR-ABL依存性細胞増殖抑制効果は、LPSによって著明に阻害されることを見出した。一方、LPSはBCR-ABL蛋白の安定化を促進することを認めた。我々は既にHsc70の細胞内過剰発現は、BCR-ABL蛋白を安定化することを明らかにしている。イマチニブの作用にたいするLPSの阻害効果は、イマチニブ耐性機序と関連している可能性が示唆されるため、現在さらにTLR4を介する細胞内シグナル伝達系について詳細な検討を進めている。本研究の成果は、慢性骨髄性白血病の病態進行及び薬剤耐性獲得機構を明らかにする上で重要な意義を持つと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでToll様受容体4(TLR4)の内因性リガンドと考えられてきた構成型熱ショック蛋白質Hsc70の作用は、大腸菌から精製されたHsc70と結合しているlipopolysaccharide (LPS) の作用によるものである可能性が高いと考えられたため、本年度は、LPS の効果について検討を行った。その結果LPSによるTLR4刺激は、慢性骨髄性白血病の薬剤(イマチニブ)耐性獲得機序と関連している可能性が高いことを見出した。現在、論文投稿準備中であり、本研究の達成度は、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)慢性骨髄性白血病の薬剤耐性獲得機序における、TLR4刺激によるBCR-ABL蛋白の安定化機序の詳細を分子レベルで明らかにする。 2)TLR4の内因性リガンドの、慢性骨髄性白血病の病態進行および薬剤耐性獲得機序への病態生理学的意義を明らかにする。 3)白血病モデルマウス(BCR-ABLトランスジェニックマウス)とTLR4ノックアウトマウスを掛け合わせ、白血病病態進行(血液細胞分化増殖等)についてさらに検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が、試薬抗体等を購入するには足りないため、次年度の助成金と合わせてこれらを購入することにした。 次年度の助成金と合わせて試薬、抗体等を購入する。
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