研究課題
TRPV4チャネルの分解・発現制御機構について検討し、以下の結果を得た。各種ヒト細胞に発現するTRPV4チャネルの活性化について検討し、活性化薬に対する感受性が異なる2種類のTRPV4チャネルが存在することを明らかにした。また活性化薬低感受性のTRPV4チャネルは、転写制御因子の制御を受け、転写因子の強制発現処理で活性化薬感受性が増大することも判明した(論文執筆中)。現在、同様な制御機構が他のTRPVチャネルにも存在するか、検討中である。またTRPA1チャネルの転写機構について詳細に検討し、ヒト関節滑膜細胞が炎症刺激を受けるとTRPA1チャネルの発現が大きく増加することを発見した。さらにこの発現制御には、炎症反応で一般に活性化されることの多いNF-KB系でなく、低酸素活性化転写因子(HIF1α)が関与することを明らかにした。またこのHIF1αはTRPA1チャネル遺伝子の新規の低酸素反応エレメント様配列に作用し、TRPA1チャネル遺伝子の転写を調整していることを発見した。さらにこのTRPA1チャネルが発現誘導されると、炎症反応を負に制御し、細胞の過度の炎症を抑えることも明らかにした。細胞がTRPA1チャネルの発現を制御し、炎症制御を行う例ははじめてであり、極めて重要な知見といえる(Hatanoら、JBC、2012)。その他、TRPA1チャネルが臨床応用薬物(リウマチ治療薬オウラノフィン)によって強力に活性化されることを見出した(Hatano ら、Am J Physiol、2013)。侵害刺激受容に関わるTRPA1が活性化されると疼痛反応が誘発される可能性がある。他の臨床応用薬物でも同様なTRPA1チャネルの活性化が引き起こされることも考えられ、薬物の副作用発生機序の解明研究として臨床的に極めて重要な発見である。
2: おおむね順調に進展している
TRPV4チャネルの分解・発現制御機構についての検討が順調に進んでいる。そのメカニズム解明が一部、うまくいっていないが、重要な発見であるため論文を執筆中である。
発見した2種類のTRPV4チャネルについて、タンパクレベルでの差異を詳細に検討し(おもに生化学実験や分子生物学実験)、活性化薬感受性の違いの根拠を明確にしたい。
生化学実験・分子生物学実験の消耗品費として予算を使用する予定である。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.phar.agu.ac.jp/lab/cell_pharm/cellpharmacol.html