研究課題/領域番号 |
23590314
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
大喜多 守 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (60449824)
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研究分担者 |
松村 靖夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40140230)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エンドセリン / 一酸化窒素 / 内皮細胞 / ETB受容体 |
研究概要 |
エンドセリンETB受容体遺伝子欠損ラットホモ接合体においては、野生型と比較してL-アルギニン静脈内持続投与下における腎組織中一酸化窒素(NO)産生能が極めて顕著に低下しており、またこの低下は選択的ETA受容体拮抗薬の投与により著明に回復することから、ETB受容体機能阻害時に生じるNO産生の低下にET-1/ETA受容体系の亢進が一部関与している可能性が示唆された。また摘出した腎組織においては、構成型NO合成酵素(NOS)の遺伝子及びタンパク発現量が野生型と比較して有意に低下していた。一方、野生型及びホモ接合体の胸部大動脈由来初代培養血管内皮細胞における内皮型NOS(eNOS)遺伝子発現量を調べたところ、ホモ接合体の発現量は極めて顕著に低下しており、この低下は選択的ETA受容体拮抗薬の添加により回復する傾向がみられた。なお、野生型の培養血管内皮細胞に選択的ETB受容体拮抗薬を添加すると有意なeNOS遺伝子発現量の増大が認められた。さらに、NO産生の主要な経路の一つであるPI3K/Akt経路においては野生型及びホモ接合体間に明らかな差異が生じていないことも判明した。これらのことから、血管内皮細胞における遺伝的なETB受容体機能阻害はeNOS遺伝子発現機構に直接的な影響をもたらすと考えられ、ETB受容体拮抗薬による薬理学的な機能阻害とは異なるメカニズムが存在している可能性が示唆された。なお、血管内皮細胞のETB受容体を選択的拮抗薬で持続的に阻害した時に遺伝的機能阻害と同等の反応が生じるかについては今後更なる検討が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で使用するETB受容体遺伝子欠損ラットの雌親は胎児を食殺する頻度が高いため、安定的な実験動物の確保が今後の課題の一つと思われる。また、初代培養細胞を用いた実験で再現性がとれない等の問題に直面したが、実験環境を再整備することによりこの問題を解決できたかことから、今後は安定した解析結果が得られると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ETB受容体遺伝子欠損ラットホモ接合体においては、腎組織におけるNOS活性が低下していることが報告されているが、我々の検討では、ホモ接合体および野生型ラット間において腎組織中NO代謝物濃度の相違は認められず、一方、L-アルギニンを静脈内持続投与した場合においてのみNO代謝物濃度の顕著な差を認めた。そこでL-アルギニン持続投与時および非投与時における ホモ接合体および野生型ラットのNO産生調節因子がどのように変動しているか種々の臓器(心臓・血管・腎臓・脳など)について詳細に調べる。また、SD系あるいはWKYラットに対する薬理学的なETB受容体拮抗薬の慢性投与とETB受容体遺伝子欠損ラットホモ接合体との差異についても検討を加える。さらに、L-アルギニン持続投与時における ホモ接合体ラットのNO代謝物濃度の低下は選択的ETA受容体拮抗薬の投与により完全に消失することから、ETB受容体機能不全時におけるET-1/ETA受容体系のNO産生抑制機序についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の遂行に必要な研究環境・機器は本学中央機器研究施設および当研究室に既に整備されているので、次年度の研究計画においても設備備品の購入は計画していない。したがって、次の(1)~(4)が研究費の主体となる。(1)実験動物(SD系及びWKYラット)の購入・飼育・屍体処理経費、(2)自家繁殖動物(ETB受容体遺伝子欠損ラット2系統)の飼育・屍体処理経費、(3)細胞培養に必要な試薬・消耗品費、(4)遺伝子・タンパク発現解析に必要な試薬類の購入を中心とした消耗品費等
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