研究課題/領域番号 |
23590314
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
大喜多 守 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (60449824)
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研究分担者 |
松村 靖夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40140230)
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キーワード | エンドセリン / 一酸化窒素 / ETB受容体 |
研究概要 |
L-アルギニン静脈内持続投与は生体内でのNO産生を増強するが、遺伝子レベルでのETB受容体機能不全時においてはL-アルギニンによる腎組織中NO産生の増大が認められない。しかしながら、このNO産生能の低下はETA受容体拮抗薬により顕著に改善される。一方、L-アルギニン無処置時の野生型及びETB受容体遺伝子欠損ラット間においては、心臓・胸部大動脈・腎臓の各組織中内皮型NO合成酵素(eNOS)及びそのリン酸化体の発現量や、eNOSの上流に位置するPI3K/Akt経路にgenotype間の差異は確認できなかった。したがって、ETB受容体/eNOS経路はbasalレベルのNO産生に一部関与しているが、NO産生増強時においては主要な増幅経路として機能している可能性が示唆された。さらに、若齢の野生型及びETB受容体遺伝子欠損ラットから摘出した胸部大動脈血管内皮細胞を初代培養し、eNOS発現量及びPI3K/Akt/eNOS経路で生じる差異を調べた。その結果、eNOS発現量においてはgenotype間に明らかな差は観察されず、むしろETB受容体遺伝子欠損ラットにおいてPI3K/Akt経路を介したeNOSリン酸化亢進が認められた。これらの結果は加齢したETB受容体遺伝子欠損ラットの胸部大動脈由来初代内皮細胞で得られた結果(eNOS遺伝子及びタンパク発現量の著明な減少)とは明らかに異なるものであり、加齢がETB受容体/PI3K/Akt/eNOS経路に及ぼす影響について更なる検討が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で使用するETB受容体遺伝子欠損ラットの雌親は胎児を食殺する頻度が高いため、安定的な実験動物の確保が課題の一つである。また本年度は、セルソーターを用いて胸部大動脈から血管内皮細胞を採取し、初代培養を行う。従来の酵素分散法のみでは、平滑筋細胞や線維芽細胞が混在する影響を完全に排除できないため、より厳密な方法として本学設置のセルソーティングシステムを用いた方法に変更する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からETB受容体遺伝子欠損ラットにおいては、腎組織中におけるNOS活性は有意に低下していることが報告されている。しかしながら我々の検討では、腎組織中NO代謝物濃度・eNOS及びリン酸化eNOSタンパク発現量にgenotype間の相違は認められず、一方、L-アルギニンを静脈内持続投与した場合においてのみNO代謝物濃度の顕著な差を認めている。そこでL-アルギニン持続投与時および非投与時における ホモ接合体および野生型ラットのNO産生調節因子がどのように変動しているか種々の臓器(心臓・血管・腎臓・脳など)について詳細に調べる。また、SD系あるいはWKYラットに対する薬理学的なETB受容体拮抗薬の慢性投与とETB受容体遺伝子欠損ラットホモ接合体との差異についても検討を加える。さらに、L-アルギニン持続投与時における ホモ接合体ラットのNO代謝物濃度の低下は選択的ETA受容体拮抗薬の投与により完全に消失することから、ETB受容体機能不全時におけるET-1/ETA受容体系のNO産生抑制機序についても検討する。また加齢がETB受容体/PI3K/Akt/eNOS経路に及ぼす影響についてもこれまでと同様に胸部大動脈由来初代培養血管内皮細胞を用いて検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費は主として以下の目的で使用する予定である。①実験動物(SD系及びWKYラット)の購入・飼育・屍体処理経費②自家繁殖動物(ETB受容体遺伝子欠損ラット2系統)の飼育・屍体処理経費③細胞培養に必要な試薬・消耗品費④遺伝子・タンパク発現解析に必要な試薬類の購入を中心とした消耗品費
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