研究課題/領域番号 |
23590315
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
籠田 智美 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (00291807)
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キーワード | プロテアーゼ活性化型受容体-2 / 肥満 / メタボリックシンドローム / 血管拡張機能 / SHRSP.ZFラット |
研究概要 |
プロテアーゼ活性化型受容体(Protease-activated receptors; PARs)は、炎症反応や組織障害などの病的状態における存在意義が注目されている。その中でもPAR-2は、血管壁に発現していること、炎症性サイトカイン刺激により誘導が亢進されることなどが知られているが、病態生理学的意義については不明な点が多い。一方、肥満を基盤とするメタボリックシンドロームは、動脈硬化性血管障害や糖尿病などの発症率が極めて高いことで注目されている。そこで、「メタボリックシンドロームでは、アディポカインにより血管壁PAR-2応答の亢進が生じ、血管組織障害が促進される」という仮説を立て研究を開始した。初年度は、18週齢(メタボリックシンドローム症状維持期)のSHRSP.Z-Leprfa/IzmDmcr (SHRSP.ZF)ラットの動脈では、正常対象Wistar-Kyoto ラットに比べ、血管平滑筋の一酸化窒素(NO)に対する拡張機能は減弱しているが、PAR-2活性化ペプチド2flyによる拡張反応は正常を維持していることを見いだした。 本年度は、PAR-2依存性動脈拡張機能の週齢(メタボリックシンドローム状態の曝露期間)による影響を検討し、1) 早期には血管内皮細胞のNO産生が低下し、次いで血管平滑筋細胞のNOに対する反応性が減弱すること、2) 2flyによる血管拡張反応の減弱は、他のNO依存性血管拡張薬に比べ遅発性であること、3) 高週齢SHRSP.ZFラット腸間膜動脈に生じる拡張機能の低下は、動脈周囲脂肪が存在することによりマスクされることを見いだした。 以上、PAR-2依存性血管拡張機構は、メタボリックシンドローム状態の早期では維持されていることを明らかにした。また、血管周囲内臓脂肪が血管抵抗性維持に関与している可能性を示唆する興味ある知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、内臓脂肪の有無による血管拡張機能への影響を検討し、メタボリックシンドロームモデルラットの血管周囲内臓脂肪は血管抵抗性維持に関与している可能性を示唆する興味ある知見を得た。一方、計画していたPAR-2を介する血管拡張機能変化に対するアディポカインの影響についての検討は継続実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、メタボリックシンドローム発症時における血管壁PAR-2発現およびその応答変化とアディポカインとの関連性について引き続き検討するとともに、PAR-2アゴニストin vivo 投与による血管拡張機能への影響についても検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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