研究課題/領域番号 |
23590319
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
岩本 隆宏 福岡大学, 医学部, 教授 (20300973)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | イオン輸送体 / Ca2+シグナル / 腎上皮細胞 / 酵母two-hybrid / 蛋白質相互作用 |
研究概要 |
Na+/Ca2+交換輸送体1型(NCX1)は、遠位尿細管(遠位曲部)の基底膜側に限局して発現しているが、その極性的なソーティング機構の分子機序は未だ不明である。本研究では、その分子基盤を同定する目的で、NCX1の細胞内ドメインをbait蛋白質として、マウス腎由来cDNAライブラリーを用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングを実施した。その結果、NCX1の細胞内ドメインがアダプター蛋白質複合体因子(AP因子)と相互作用することを見出した。この相互作用はnativeなNCX1とAP因子の間でも確認された。次に、AP因子のGST融合蛋白質とNCX1細胞内ドメインの様々な領域のHisタグ蛋白質を用いたGST-pull downアッセイによりAP因子の結合部位を解析したところ、細胞内ドメインのCBD1(Ca2+結合部位)に結合することが明らかとなった。一方、AP因子は相同配列を有するCBD2には結合しなかった。さらに、CBD1領域内の変異解析(Ala置換)を行い、その特異的結合配列を同定した。興味深いことに、NCX1細胞内ドメインとAP因子の相互作用はCa2+濃度依存性であり、低Ca2+濃度において結合量が増大した。現在さらに、本相互作用の機能的役割について、NCX1の膜集積機構(腎上皮細胞NCX1の基底膜側局在化)および活性制御機構(Ca2+依存性不活性化)の両面から追究している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、NCX1とAP因子の相互作用の分子機序を解析し、NCX1の遠位尿細管基底膜側へのソーティング機構およびその生理的意義を解明することを目的としている。これまでに、AP因子のGST融合蛋白質とNCX1細胞内ドメインの様々な領域のHisタグ蛋白質を用いたGST-pull downアッセイによりAP因子の結合部位を解析した。その結果、細胞内ドメインのCBD1(Ca2+結合部位)に結合することを明らかにし、さらに、CBD1領域内の変異解析(Ala置換)により、その特異的結合配列を同定した。AP因子に対する結合能を欠失したNCX1変異体の構築にも成功した。また、NCX1の細胞外領域ペプチドに対する抗ニワトリ抗体を用い、培養腎上皮細胞を用いた野生型および変異型NCX1の局在解析を実施した。それに加えて、変異型NCX1の局在・機能異常を生体(個体)レベルで実証し、生理学的・病態学的意義を検討する目的で、野生型および変異型NCX1の遠位尿細管特異的トランスジェニックマウスの作製に取り掛かった。このように、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
1)遠位尿細管特異的トランスジェニックマウスを用いて、AP因子との結合能を欠失した変異型NCX1の機能解析を実施する。具体的には、血液・尿成分解析(電解質濃度(Ca2+, Na+, K+, Cl-)、pH、浸透圧)、腎機能(BUN、クレアチニン、尿量、尿中蛋白)、心機能(血圧・心拍数および心エコー)、骨形態計測(マイクロCT)、病理組織学的解析を実施する。特に、腎機能(Ca2+再吸収、体液電解質代謝、腎尿細管障害)および骨代謝に注目する。2)AP因子はCBD1領域内に結合すると考えられた。興味深いことに、このCBD1領域にはNCX1のCa2+依存性活性化機構に関わるCa2+結合部位が存在している。最近、NCX1細胞内ドメインの構造解析により、CBD1のCa2+結合部位にCa2+が結合するとNCX1細胞内ドメインが大きく構造変化することが報告されている。そこで、野生型および変異型NCX1を遺伝子導入したMDCK細胞を用い、細胞内Ca2+濃度と基底膜側への局在制御との関係について解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」に必要な経費は、遺伝子組換え実験、細胞培養実験、蛍光抗体イメージング解析、電気生理学的解析などを実施するための試薬代、また遺伝子改変マウスの作製・維持に必要な実験動物代である。また、研究成果を国内外で発表するための旅費および論文作成のための諸費用が必要である。
|