研究課題/領域番号 |
23590319
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
岩本 隆宏 福岡大学, 医学部, 教授 (20300973)
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キーワード | イオン輸送 / Ca2+シグナル / 腎上皮細胞 / 酵母two-hybrid / 蛋白質相互作用 |
研究概要 |
Na+/Ca2+交換輸送体1型(NCX1)は、遠位尿細管の基底膜側に限局して発現しているが、その極性的ソーティング機構の分子機序は未だ不明である。本研究では、その分子基盤を解析する目的で、NCX1の細胞内ドメインをbait蛋白質として、マウス腎由来cDNAライブラリーを用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングを実施した。その結果、NCX1の細胞内ドメインがアダプター蛋白質複合体因子(AP因子)と相互作用することを見出した。Pull downアッセイによりAP因子の結合部位を解析したところ、細胞内ドメインのCBD1(Ca2+結合部位)に結合することが判明した。さらに、CBD1領域内のAla置換変異解析により、その特異的結合配列を同定した。興味深いことに、NCX1細胞内ドメインとAP因子の相互作用はCa2+濃度依存性であり、低Ca2+濃度において結合量が増大した。EGFP標識NCX1を発現させた培養腎上皮細胞(MDCK細胞)を蛍光イメージング解析したところ、NCX1は細胞内Ca2+濃度の増加に伴って基底膜側細胞膜にソーティングされること、一方、細胞内Ca2+濃度の減少に伴ってリサイクリングベジクルに移行することが明らかになった。現在さらに、本相互作用の機能的役割について、NCX1の活性制御機構(Ca2+依存性不活性化)の観点からも追究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、NCX1とAP因子の相互作用の分子機序を解析し、NCX1の遠位尿細管基底膜側へのソーティング機構およびその生理的意義を解明することを目的としている。これまでに、pull downアッセイによりNCX1のCBD1(Ca2+結合部位)領域内の特異的結合配列を同定した。また、CBD1とAP因子の相互作用はCa2+濃度依存性であることを見出し、細胞内Ca2+濃度の減少に伴って腎上皮細胞基底膜側に局在するNCX1がリサイクンリングベジクルに移行することをリアルタイムイメージング解析した。最近、AP因子への結合能を欠失した変異型NCX1および野生型NCX1の遠位尿細管特異的トランスジェニックマウスの作製に成功した(完成時期が予定より半年遅れた)。次年度は、これらモデルマウスを用いて、NCX1の腎基底膜側局在制御の生理学的・病態学的意義について解析する。
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今後の研究の推進方策 |
1)遠位尿細管特異的トランスジェニックマウスの作製が半年遅れたため、平成25年度において、AP因子との結合能を欠失した変異型NCX1のトランスジェニックマウスを用いて個体レベルで変異機能解析を実施する。具体的には、血液・尿成分解析、腎機能、心機能、骨形態計測、病理組織学的解析を実施する。特に、腎機能(Ca2+再吸収、体液電解質代謝、腎尿細管障害)および骨代謝に注目する。 2)さらに、新たな実験項目として、他のNCX分子種(NCX2、NCX3)の細胞内ドメインとAP因子の相互作用を検証した上で、各分子種の膜局在およびトラフィック機構を解析する。さらに、ここで見出した分子種間の差異を利用し、その責任領域を分子種間キメラ解析により同定し、トラフィック機構の分子機序の解明に応用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように、トランスジェニックマウス作製が予定より半年遅れたため、808,194円の経費を平成25年度に繰り越した。本経費は、トランスジェニックマウスの病理学的・生理学的解析に使用するオールインワン蛍光顕微鏡の購入費(複数の科研費による共用設備購入)に使用する。
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