研究課題
Na+/Ca2+交換輸送体1型(NCX1)は、遠位尿細管基底膜側に限局して発現しているが、その極性的ソーティング機構の分子機序は未だ不明である。本研究では、その分子基盤を解析する目的で、NCX1細胞内ドメインをbait蛋白質として、マウス腎由来cDNAライブラリーを用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングを実施した。その結果、NCX1細胞内ドメインがアダプター蛋白質複合体因子(AP因子)と相互作用することを見出した。AP因子の結合部位を解析したところ、細胞内ドメインのCBD1(Ca2+結合部位)に結合することが判明した。さらに、Ala置換変異解析により、CBD1領域内の特異的結合配列を同定した。興味深いことに、NCX1細胞内ドメインとAP因子の相互作用はCa2+濃度依存性であり、低Ca2+濃度において結合量が増大した。つまり、NCX1は細胞内Ca2+濃度の増加に伴って基底膜側細胞膜にソーティングされること、一方、細胞内Ca2+濃度の減少に伴ってリサイクリングベジクルに移行することが推察された。最近、AP因子への結合能を欠失した変異型NCX1および野生型NCX1の遠位尿細管特異的トランスジェニックマウスを作製した。現在、これらモデルマウスの腎機能解析、血液成分解析、骨形態解析により、NCX1の腎基底膜側局在制御の生理学的・病態学的意義を追究している。さらに、NCX2、NCX3の細胞内ドメインとAP因子の相互作用についても解析を進めている。
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