研究課題/領域番号 |
23590321
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
渡辺 康裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (90127324)
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研究分担者 |
石塚 俊晶 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (30399117)
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
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キーワード | 神経新生 / GPR56 / 神経前駆細胞 / 細胞外マトリックス |
研究概要 |
うつ病等のストレス関連疾患では、脳海馬や側脳室周囲の神経新生低下とG蛋白共役型受容体の1種GPR56の発現低下との関連が注目されている。昨年度の研究では、神経伝達物質ノルアドレナリンの受容体であるalpha-およびbeta-アドレナリン受容体が、神経前駆細胞の増殖および分化に関与しており、マウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)および神経前駆細胞でのGPR56の発現も認めたが、alpha-およびbeta-アドレナリン受容体との直接的関連性は確認できなかった。H24年度は、まず、神経分化に与えるGPR56ノックダウンの影響を検討した。マウスiPS細胞由来の胚様体にNegative control siRNAおよびGRP56 siRNAを導入後、All Trans Retinoic Acid (ATRA)で刺激し、1週間接着培養させ、神経前駆細胞への分化を誘導した。Negative control siRNAに比し、GPR56 siRNA 導入群ではATRAによる神経前駆細胞に特異的なNestinの発現が有意に抑制されていた。また、脳内ニッシェに多く発現している細胞外マトリックスが、神経幹細胞膜状のインテグリンとの結合を介して、幹細胞の機能維持や神経新生を調節していることが報告されている。マウスiPS細胞由来胚様体をフィブロネクチンでコートした培養皿に接着させ3日後の神経前駆細胞数を蛍光抗体染色で比較したところ、無刺激に比しATRA刺激では、接着する神経前駆細胞の数の増加が観察された。しかし、GPR56 siRNA導入は、ATRA刺激により増加した接着神経前駆細胞数には明らかな影響を与えなかった。今回の結果により、GPR56が、ATRAによる神経前駆細胞への分化誘導に関与する一方、神経前駆細胞の細胞外マトリックスとの結合活性には関与していない可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vivo での神経新生や行動異常に対するGPR56 の影響をみるため、いくつかのGPR56 shRNA 発現ベクターを用いて、マウス脳内でのGPR56 ノックダウン効果を検討しているが、現段階では、持続的ななノックダウン効果が得られていない。ひきつづき導入技術の改良を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、幹細胞の機能維持や神経新生に対する細胞外環境(ニッシェ)の関与を明らかにするため、iPS細胞や神経前駆細胞でのインテグリン発現および細胞外マトリックスとの結合活性に対する神経伝達物質ノルアドレナリンやセロトニンの影響を検討する。また、マウス人工多能性幹細胞(iPS細胞)および神経前駆細胞の神経分化やGPR56発現に対するセロトニンの影響を検討する。一方、マウスでの神経新生や行動異常に対するGPR56 およびインテグリンの影響は、GPR56 ノックアウトマウスやインテグリン抗体投与マウスでの慢性変動性ストレス刺激を行い検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・消耗品として、培養細胞の維持、継代、保存に必要な培地・試薬類が40万円、インテグリン発現および細胞外マトリックスとの結合活性解析に伴う蛍光抗体染色やフローサイトメトリー法の実施に必要な抗体・消耗品が40万円、マウスに導入するshRNAベクターの作製や導入に必要な試薬類が40万円、行動解析実験に必要な消耗品類が20万円で、計140万円必要である。また、実験動物の購入・維持および飼育費用として30万円、学会や研究会出席のための旅費として30万円、総計200万円使用する予定である。
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