研究課題/領域番号 |
23590322
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
諫田 泰成 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (70510387)
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研究分担者 |
石田 誠一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 室長 (10270505)
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キーワード | 乳癌 / 活性酸素 / エストロゲン / NO / cGMP / PKG |
研究概要 |
近年、乳癌をはじめとした種々の癌において、増殖能が低く薬剤に対して抵抗性を示す癌幹細胞の存在が示唆され、癌幹細胞によって癌の再発・転移がおこると考えられる。しかながら、癌幹細胞を標的とした治療法は未だ実現しておらず、癌幹細胞における標的分子を明らかにする必要がある。 我々は昨年度までに、乳癌幹細胞の新たな増殖制御機構としてNOシグナルを明らかにしてきた。そこで、本年度は、まずNOシグナルによる増殖を誘導するホルモンの探索を行った。その結果、エストロゲン刺激によってNOが産生されること、エストロゲン刺激による乳癌幹細胞の増殖はNO合成酵素阻害によって抑制されることから、エストロゲンがNOシグナルを介して癌幹細胞の増殖を制御していることが考えられた。 次に、NOシグナルの下流で作用する分子として、cGMP、NO感受性シクラーゼ(sGC)、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)を検討した。乳癌幹細胞の増殖は、cGMPアナログによってmimicされた。エストロゲン刺激による乳癌幹細胞の増殖はsGC阻害剤によって抑制されたことから、cGMPの関与が示唆された。さらに、エストロゲン刺激による乳癌幹細胞の増殖はPKG阻害剤によって抑制されたことから、cGMPの下流でPKGが関与していることが示唆された。 以上の結果から、エストロゲン刺激による乳癌幹細胞の増殖は、NO/cGMP/sGC/PKG経路を介することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、乳癌幹細胞のモデル細胞を用いて、NOシグナルを介して乳癌幹細胞の増殖に関与するホルモンとして、エストロゲンやニコチンを見いだした。これらの結果から、NOシグナルがホルモン依存性の乳癌において癌幹細胞を標的とした創薬につながる可能性が考えられる。さらにNOシグナルの下流として、薬理学的な手法により検討を行った。その結果、NO/cGMP/PKG経路を明らかにすることができた。 現在、PKGの基質に関してスクリーニングを行っているが、予想以上に時間がかかってしまい、研究費も繰り越しせざるを得なくなった。基質の同定に向けて、マイクロアレイなどにより絞り込んだ後、各分子に対してsiRNAを作製し、増殖に対する影響を調べる予定である。 以上の結果から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
NOの下流シグナルとして、NO→cGMP→NO感受性シクラーゼ(sGC)→プロテインキナーゼG(PKG)を介する経路を明らかにしている。そこで、PKGの基質の同定を目指す。基質として現在多くの分子が知られているので、マイクロアレイによる遺伝子の網羅解析を行って絞り込む予定である。次に、候補となる分子に対してsiRNAを作製し、増殖に対する影響を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要な研究機器はすべて揃っていることから、主に研究試薬に充てる予定である。特に、基質の同定に必要な遺伝子の網羅的解析と候補分子に対するsiRNAに使用する。また本研究で得られた知見を国内外の学会などで積極的に発表するため、出張旅費にも使用する予定である。
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