研究課題
本研究は、初期段階の乳癌に誘導される浸潤・転移形質獲得及び微小転移形成過程におけるGEP100-Arf6-AMAP1経路の活性化・不活性化の分子機序を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。上皮由来の癌が浸潤形質を獲得する過程において、上皮-間葉形質転換 (EMT) に類似した現象を伴うことが推察されており、EMT様進行過程にGEP100-Arf6-AMAP1経路の活性化が重要な役割を担っていること、そのシグナルの活性化にp53遺伝子の変異が必須であることを見いだした。その分子機序として、TGFβ1刺激からc-Met/HGFレセプターの活性化を介していること、その際、GEP100がアダプター分子Gab1を介してc-Metに相互作用する新たな分子機序を見いだした。さらに、p53遺伝子変異はコレステロール代謝経路であるmevalonate pathway関連遺伝子の発現を上昇することが知られており、その中間産物がArf6の活性化に関わっている興味深い知見を得た。また、乳癌幹細胞マーカーであるCD44+/CD24-の発現を示すMDA-MB-231などの高浸潤性乳癌細胞群において、Arf6やAMAP1の蛋白質発現量が亢進しており、癌幹細胞様形質の誘導にGEP100-Arf6-AMAP1シグナルが関与していることが考えられる。ヒト乳癌の臨床標本の免疫染色及びデータベース解析から、GEP100-Arf6-AMAP1シグナル因子群の発現は放射線治療後の再発及び予後不良との相関が見られ、再発及び予後不良因子になる可能性が示唆される。以上の結果は、GEP100-Arf6-AMAP1経路とp53遺伝子変異が連関して、初期段階の乳癌に誘導される浸潤・転移形質獲得及び微小転移形成過程に関与していることを示しており、新たな経路を標的とした診断方法の開発に繋がる可能性を提示している。
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PLoS One
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Cell Communication and Signaling
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http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~g21001/index.html