研究課題/領域番号 |
23590326
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗原 由紀子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80345040)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 非コードRNA / 発生 / 遺伝子発現制御 / 形態形成 |
研究概要 |
我々はエンドセリン-1(ET-1)が神経堤細胞に作用して、下顎のアイデンティティーを決定することを示してきたが、そのET-1シグナルにlong non-coding RNA(lncRNA)Evf2が関わっていることを見出した。そこで、Evf2の作用をin vivo, in vitroで解析したところ、下顎形成の主要な核転写因子群やエンハンサー領域に対し、Evf2がcis, transに作用していることを見いだした。このことが、Evf2ノックインマウス(エンドセリンA受容体プロモーター下にEvf2をノックインしたマウスのホモ接合体)での表現型の変化を説明しうると考えられた。その作用メカニズムを明らかにするために、エピジェネティクス修飾、miRNAの産生、他のRNAのmiRNAの産生、パラスペックルへの関与に注目した。エピジェネティクス修飾に関しては、少量の胚組織からのChIP-シークエンスの系を確立することがほぼできたので、データを蓄積中である。また、lncRNAが機能を発揮するにはそれと結合する蛋白が重要であるが、まずlncRNAと結合することが知られているパラスペックル蛋白であるPSPC1をクローニングした。PSPC1は胎児胚においては頭部、心臓、鰓弓、四肢で発現し、培養細胞では胎児胚の発現よりかなり弱いもののP19,NIH3T3細胞株で発現が見られた。P19細胞株において、PSPC1はエンハンサーに対して核転写因子と強調して活性を上昇させる可能性を示唆するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Evf2が作用する蛋白のいくつかを同定することができた。しかしEvf2の機能メカニズムの解析の一つとして、蛋白との結合を証明する必要がある。このために、一般の免疫沈降法(Immunoprecipitation:IP)を応用したRNA-IPが必要であるが、一般のIPより効率のよい免疫沈降が必須なことが判明し、発現ベクターのタグに工夫を加えていたため、現在RNA-IPの結果が出ていない。しかし非常に効率のよいIPの系を構築できたので、順次実験中である。
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今後の研究の推進方策 |
RNAと蛋白の結合をRNA側からと蛋白側からの両方向で確認し、できうる限り生体での現象に関連させつつ、その結果から分子メカニズムに踏み込んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子生物学的試薬、細胞培養関連経費はもとより、ChIP-seq等、大量のデータが得られてくるので、その管理解析をする研究補助者の謝金を計上する。
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