研究課題/領域番号 |
23590326
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗原 由紀子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80345040)
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キーワード | 発生医学 / 形態形成 / 非コードRNA / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
申請者はこれまで、エンドセリン-1(ET-1)がET-A受容体(ETAR)を介して、頭頚部の形態形成において神経堤細胞の運命決定を制御する因子として働き、特に第1鰓弓では下顎のアイデンティティーを決定することを、マウス発生工学的研究によって示してきた。本研究課題では、noncoding RNAのEvf2が、ET-1/ETARシグナルに関わる分子基盤の解明を目的とした。核転写因子Dlx5、Dlx6は、顎顔面形成においてET-1/ETARシグナル下に存在するが、Evf2はこのDlx5、Dlx6のエンハンサーであるmI56i領域に作用して発現を亢進させることをEvf2ノックインマウスの鰓弓とP19細胞を用いて示すことができた。同様の系で、Evf2は核転写因子HAND2に対して抑制的に働くことを示したが、これはEvf2KIマウスで、ETARKOマウスに比べさらに下顎の切歯が低形成になった原因と考えられた。また、野生型(WT)、ETARKO、Evf2KIの鰓弓のマイクロアレイを用いてEvf2に関わる新たな因子をスクリーニングし、パラスペックル蛋白のPSPC1に着目した。過剰発現の細胞系で、PSPC1蛋白とEvf2mRNAは核内で一部重なる、または接する状態を呈していたため、Evf2と複合体を形成していることが既に知られているDlx蛋白群とPSPC1との関係を免疫沈降法にて検討したところ、3者が複合体を形成している可能性が示唆された。一方、Evf2とDlx5,6の関係をin vivoで検討している中で、Evf2KIヘテロ かつDlx5/6KOヘテロのマウスが生後1-2日で肺の異常(または 腸管の異常)で死亡することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下顎の形態形成に必要な因子に対するEvf2の調節に関しては、Evf2とDlx5、Dlx6、HAND2の関係をin vivo、in vitroでの検討し、最終的なデータをまとめることができ、現在投稿準備中である。 また、Evf2による遺伝子発現調節の分子メカニズムにおいては、Dlx2のみならずDlx5,Dlx6とEvf2が協調してエンハンサーに作用している傍証が得られているのでRNAと蛋白の直接結合の有無をはっきりさせる必要があるが、一方でPSPC1蛋白とEvf2とのエンハンサーに対する協調作用が見られることから、パラスペックルの転写やRNAプロセッシングへの関与を加味して、Evf2の分子メカニズム研究の一つの方向性を示すことができた。 さらにEvf2KIヘテロ かつDlx5/6KOヘテロマウスの表現型から新生児疾患のモデルマウスとなる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
Evf2がDlx5やDlx6とエンハンサーを介して遺伝子発現調節に関わっていることを示せたので、PSPC1を含めさらなる分子メカニズムを明らかにしていく。また、プロモーター領域に対する作用についても、詳細にLuciferase assayを重ねた上で、転写開始複合体の一部に組み込まれているか検討したい。 一方、Evf2とDlx5,6の関係をin vivoで検討している中で、偶然にEvf2KIヘテロ かつDlx5/6KOヘテロのマウスが生後1-2日で肺の異常(または 腸管の異常)で死亡することを見いだした。この要因として、Dlx5/6 +/-, ETAR+/-, Evf2異所生発現の3要因があるのでEvf2の貢献度を慎重に見極めつつ、Evf2の生体内での作用を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策に基づいて、主にLuciferase assayに関係する消耗品および細胞培養用試薬などに使用する計画である。
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