我々は、エンドセリン-1(ET-1)/ET-A受容体(ETAR/Ednra)シグナルが第1鰓弓では下顎のアイデンティティーを決定することを示してきたが、下顎の上顎化が見られるEdnra-/-にEvf2を発現させると、下顎歯槽骨遠位部と切歯の低形成が増強した。これは、whole mount in situ hybridizationでEdnra-/-胚の鰓弓遠位に僅かに残存していたHAND2の発現消失に起因していると考えられた。また、鰓弓におけるET-1/ETARシグナルの主要な核転写因子Dlx5/6はHAND2のエンハンサーに作用するが、そのDlx5/6とDlx5/6のエンハンサー、Evf2は相互にポジティブフィードバックループを形成していることを培養細胞とEvf2ノックインマウスの鰓弓の両方で示した。その作用メカニズムの一つとして、mI56iエンハンサーの一部のCpGのメチル化が関与している可能性が示唆された。さらに鰓弓のマイクロアレイの結果からパラスペックル蛋白のPSPC1に注目した。PSPC1はEvf2と複合体を形成することができ、in vitroではDlx5/6のエンハンサーを介して転写活性に作用し、強制発現系においてEvf2がパラスペックルの局在を変化させることを見いだした。これらによりEvf2が生体内でも、核内でパラスペックル蛋白に直接または間接的に結合して、転写調節などの機能に関与する可能性が示唆された。
|