研究概要 |
NLRP3-NF-κB活性化経路が細胞ストレスに起因する炎症誘導においてもIL-1β前駆体産生・蓄積に寄与しうるか調べるため、NLRP3ノックダウンTHP-1 細胞の尿酸結晶およびアルミニウムアジュバント刺激に伴うIL-1β前駆体産生・蓄積をコントロールTHP1細胞と比較した。siRNAによる一過性のノックダウンならびにshRNAによるstableノックダウン細胞いずれにおいてもNLRP3ノックダウン細胞株ではIL-1β前駆体産生・蓄積が減弱していた。これらから、病原体感染を伴わない炎症誘導においてもNLRP3がNF-κB活性化を誘導している事が示された。 非免疫系組織でも発現しているNLRP3がNF-κBの活性化誘導に寄与しているか調べるため、NLRP3, IL-1βを恒常的に発現しているがん細胞株にsiRNAを導入してNLRP3発現をノックダウンし、IL-1β前駆体産生・蓄積をmRNAレベル(RT-PCR, 定量PCR法)で調べた。種々のがん細胞株(HT1080, MKN45, SH10-TC, HT29, SW948, WiDr)でNLRP3ノックダウンによりIL-1βmRNA発現が減弱していた。また興味深い事にHT1080細胞が恒常的に産生しているIL-6もNLRP3ノックダウンによりmRNA発現、培養上清中への分泌が減弱していた。これらから、がん細胞においてもNLRP3がNF-κBの活性化を誘導し、がん細胞のIL-1β 前駆体産生・蓄積さらには他のサイトカイン産生にも寄与していることが示された。 以上の結果から、NLRP3-NF-κB活性化経路が免疫系組織のみならず、がん細胞等の非免疫組織においても非感染性細胞ストレスに伴う炎症誘導過程に重要な役割を担っている事が示唆された。
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次年度の研究費の使用計画 |
siRNA, shRNAによるノックダウン細胞株を多数樹立し、解析するための試薬類:培養細胞用培地、oligo DNA、siRNA、RNA抽出試薬、cDNA合成試薬、定量PCR試薬、PCR試薬、ELISA 試薬、抗体、等。 NF-κB活性化シグナル伝達分子cDNAを単離し、Mammalian Two-HybridシステムでNLRP3-NF-κB活性化経路因子との結合の有無を判定するための試薬類:DNA精製キット、遺伝子組換え試薬、ルシフェラーゼアッセイ試薬、DNAシークエンス解析試薬、免疫沈降用抗体, 等。 Mammalian Two-Hybridシステムを応用した独自の結合スクリーニング系を構築し、NLRP3, ASCと結合する因子をcDNAライブラリからスクリーニングするための試薬類:DNA精製キット、遺伝子組換え試薬、DNAシークエンス解析試薬、cDNAライブラリ作製試薬、アイソトープ、培養細胞用培地、等。
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