研究課題/領域番号 |
23590330
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
井上 修 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (00432154)
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キーワード | CLEC-2 / 血小板 / 肺 / 発生 / 肺胞上皮 / podoplanin |
研究概要 |
H25年度は以下の検討を行った。 1. CLEC-2 KO表現型解析を行った。これまでの検討で、CLEC-2 KOでは肺の形状が異常であり出生後に肺の拡張不全が発生している可能性が示唆されていた。H25年度は胎仔肺を用いた組織学的検討を行った。WTと比較しCLEC-2欠損マウス胎仔にはE17.5から細胞密度の増加を認めた。また肺胞形成にも差を認めた。CLEC-2欠損マウス胎仔は肺胞内腔が狭く、中隔を形成する細胞層が厚い。あるいは肺胞の構造そのものができておらず細胞の密度が非常に高い領域も認めた。しかしI型、II型肺胞上皮のマーカーの発現には大きな差異は認めなかった。 2. 血小板CLEC-2が肺の正常な発生に重要であるのか検討を行った。CLEC-2は血小板膜上に加え、肝細胞、単球などでの発現が知られている。そこで全てのCLEC-2を欠損させたCLEC-2 KOマウスに加え、血小板巨核球系でのみCLEC-2を欠損させたPF4Creマウス、新たに作成したCLEC-2発現抑制抗体によるCLEC-2ノックダウンマウスで肺の形態異常について解析を行った。その結果、PF4Creマウス、CLEC-2ノックダウンマウス共に異常を認めたことから、胚の発生に重要なのは血小板CLEC-2である可能性が示唆された。 3. 血小板CLEC-2と接触する可能性のあるpodoplanin(pdpn)発現細胞の同定を、表現型の現れる前であるE16.5胎仔肺を使用して検討した。pdpnは肺胞上皮細胞に発現が認められるが、肺胞上皮に近接した血小板は凝集しているように大きな塊として染色された。血小板活性化を見れないか、JON/A(activated integrin αIIbβIII抗体)、P-selectin抗体、リン酸化Syk抗体などで組織染色を行ったが、確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年4月1日より臨床検査医学講座から附属病院安全管理部へと異動人事があった。異動先では感染制御に関わる業務を専任で行う事となり、研究時間の確保に難渋した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 肺発生に必要なのは血小板活性化かpdpn発現細胞内シグナル活性化か検討を行う。具体的にはCLEC-2 Fcリコンビナント蛋白をCLEC-2欠損へテロマウス母体へ投与する。交配後にWT同様の肺構造が認められる場合、CLEC-2 Fcリコンビナント蛋白によりpdpn発現細胞内に惹起されるシグナルが重要ということが示唆される。 2. 肺の発生や正常構造の構築に影響を与えると思われる細胞(myofibroblast)に異常があるか、組織学的検討を追加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年4月1日より臨床検査医学講座から学部附属病院安全管理部感染制御室へと所属が変更となった。これに伴いあらたに病院感染制御に関する専任での業務が始まり、研究計画が予定通りに進まない状況が発生した。 本研究のこれまでの結果では、血小板CLEC-2の欠損により肺胞構造の異常が認められている。血球細胞が肺の発生や成熟に関わる機序は不明であり、そのメカニズムの更なる解明のため、以下の検討を行いたい。1. 各種免疫染色用抗体を用いた組織学的検討を行う。2. 肺胞構造の構築に関わると思われる中皮由来細胞(myofibroblast)のセルラインやマウス胎仔からの分離細胞と血小板を用いた、細胞の遊走や分化に関する検討などを行う。
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