H26年度は以下の検討を行った 1. CLEC-2欠損マウス肺のより詳細な表現型解析を行った。CLEC-2欠損マウスはE17.5以降肺胞内腔がWTに比べて狭く、また肺胞中隔が厚いことをH25年度に報告している。より詳細な表現型解析を行ったところ、WTでは肺胞中隔内にαSMA陽性のmyofibroblastが多数観察されたが、KOではほとんど見られないことが判明した。また、肺胞中隔の構造維持に重要とされるElastinやCollagenの繊維がWTでは明瞭に観察されるものの、KOではほとんど見られないこともわかった。MyofibroblastがエラスチンなどのECM形成に重要との報告があることから、CLEC-2欠損による肺胞形成異常は肺胞中隔内のmyofibroblast欠損に起因するECM分布異常である可能性が示唆された。 2. 肺胞形成に対する血小板活性化の影響を解析した。前述の通りCLEC-2欠損マウス肺では肺胞中隔のmyofibroblastが欠損するが、その由来は肺表面の中皮細胞と考えられている。そこでラット肺中皮由来の培養細胞を用いて、血小板活性化によって放出される顆粒内容がmyofibroblastへの分化を促進するか検討した。分化マーカーであるαSMAの発現上昇と中皮から間充織への転換を示すE-cadherin発現低下及び、N-cadherin発現上昇を認めた。これらの結果から血小板活性化が中皮細胞のmyofibroblastへの分化を促進することが明らかとなった。 3. CLEC-2Fcリコンビナント蛋白をCLEC-2欠損ヘテロマウス母体へ投与し、肺胞形成に影響するか調査したが、コントロールと比べても顕著な違いはなかった。リコンビナント蛋白が胎盤を通過したかどうかについてFcを検出することで確認したが明瞭なシグナルが得られなかった。投与量が少ないか、胎盤通過に障害がある可能性があり、今後の課題とした。
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