研究課題
哺乳動物において19種類存在するWntが細胞内の複数のシグナル経路を活性化することにより、多彩な細胞応答を制御する。これまでに私は精製Wnt11やWnt3a蛋白質を用いて糖鎖や脂質修飾を質量分析法によって解析し、翻訳後修飾によるWntの細胞外分泌や機能発現の制御機構を明らかにしてきた。今年度はさらにWnt1やWnt5a、Wnt5bの翻訳後修飾や極性化上皮細胞におけるWnt1とWnt5a、ならびにWnt受容体の細胞内小胞輸送の制御機構について解析した。今年度に得られた知見は以下の5点である。1)PNGase FやEndo HfのグリコシダーゼによってWnt1の糖鎖修飾を解析したところ、N29にはcomplex型、N316にはhigh mannose型、N359にはcomplex型が付加されることが示唆された。2) 精製したWnt5aとWnt5bを用いて翻訳後修飾を質量分析法により解析したところ、Wnt5aのS244、Wnt5bのS223にはパルミトレイン酸が付加されていた。また、Wnt5aのN114にはhigh mannose型、N312にはhybrid型、N326にはhigh mannose型のN結合型糖鎖が修飾されていた。3)極性上皮細胞においてWnt5aはクラスリンやAP1によって側底部へ分泌された。4)極性上皮細胞においてWnt1は頂端部と側底部の両者に分泌され、頂端部への分泌にはexocyst、側底部への分泌にはクラスリンやAP1が必要であった。5)極性化上皮細胞においてWnt受容体のFrizzled2やLRP6、Ror2はクラスリンやAP1によって側底部へ輸送された。これらの結果から、極性化上皮細胞におけるWntとそれらの受容体の細胞内小胞輸送の制御機構の一端を明らかにした。
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J. Cell Sci.
巻: 126 ページ: 2931-2943
10.1242/jcs.126052
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molbiobc/