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2012 年度 実施状況報告書

足場分子アファディンが持つ多面的細胞機能を制御する分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 23590335
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

扇田 久和  滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)

キーワードシグナル伝達 / 細胞接着 / 細胞形態 / 脈管構造
研究概要

アファディンは細胞接着分子ネクチンの細胞内領域に結合し、ネクチンの足場分子として細胞間接着の形成に重要であると共に、細胞の運動、生存、極性といった様々な基本的細胞機能を制御する多面的な作用を持ち、個体の形成・維持において必要不可欠な分子である。アファディンの細胞間接着における分子機構については、私のこれまでの研究により多くの点が明らかとなっているが、その他の細胞機能におけるアファディンの分子機構は未解明の部分が多く残されている。この未解明の点を、特に、脈管系の形成に焦点を当てて明らかにするため、内皮細胞特異的にアファディンを欠失させたコンディショナルノックアウトマウスを用いて実験を行った。このコンディショナルノックアウトマウスはほとんどが胎生16.5日で致死となる。さらに詳細な観察により、胎生14.5日時点で著明な浮腫が生じており、これが胎生致死の原因と考えられた。この浮腫が生じる機序として血管内皮細胞ではなく、リンパ管内皮細胞の細胞接着が破綻し、その部位からリンパ液が漏出していることが見出された。そのメカニズムを検討するため、まず、リンパ管内皮細胞の分化異常やアポトーシスについても解析したが、これらの異常は認められなかった。次に、細胞接着を制御する低分子量Gタンパク質RhoAの活性化を調べたところ、アファディンの発現が消失したリンパ管内皮細胞で、血管内皮細胞とは異なり、RhoAの活性化が有意に上昇していた。逆に、RhoAの活性化を抑制すると、アファディンの発現が消失したリンパ管内皮細胞での細胞接着が回復した。以上より、アファディンはリンパ管内皮細胞において、RhoAの活性化を厳密に制御することで細胞接着を形成・維持していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アファディンが個体の組織、特に、脈管系の形成・維持に関わる機構を、コンディショナルノックアウトマウスおよび細胞実験を組み合わせて順調に解明しつつある。

今後の研究の推進方策

アファディンの多面的細胞機能が脈管系以外の組織、例えば、心臓などでどのように作用しているかを検討するため、心臓特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作製と解析に取り組む。また、分子レベルでの詳細な解析のため、ラット心筋細胞の初代培養の立ち上げと、この細胞を用いたシグナル伝達分子の活性化状態の解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

マウスの飼育および培養細胞の実験を中心に研究費を使用する。培養細胞を用いたシグナル伝達の解析実験では、特に、低分子量Gタンパク質RhoAおよびRacの活性化機構の解明に焦点を当てて有効に研究費を用いる。その他のシグナル伝達分子としては、チロシンリン酸化酵素に着目した活性化機構解析のために研究費を用いる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Knockdown of legumain inhibits cleavage of annexin A2 in the mouse kidney.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamane T, Hachisu R, Yuguchi M, Takeuchi K, Murao S, Yamamoto Y, Ogita H, Takasawa T, Ohkubo I, Ariga H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 430 ページ: 482-487

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.12.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Purification, molecular cloning and functional characterization of swine phosphatidylethanolamine-binding protein 4 from seminal plasma.2012

    • 著者名/発表者名
      An LP, Maeda T, Sakaue T, Takeuchi K, Yamane T, Du PG, Ohkubo I, Ogita H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 423 ページ: 690-696

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.06.016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Unique haplotype in exon 3 of cone opsin mRNA affects splicing of its precursor, leading to congenital color vision defect.2012

    • 著者名/発表者名
      Ueyama H, Muraki-Oda S, Yamade S, Tanabe S, Yamashita T, Shichida Y, Ogita H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 424 ページ: 152-157

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.06.094

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Domain 5 of high molecular weight kininogen inhibits collagen-mediated cancer cell adhesion and invasion in association with α-actinin-4.2012

    • 著者名/発表者名
      Hatoh T, Maeda T, Takeuchi K, Ogikubo O, Uchiyama S, Otsuka T, Ohkubo I, Ogita H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 427 ページ: 497-502

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.09.079

    • 査読あり
  • [学会発表] 杆体一色覚で見出された網膜錐体cGMP依存性カチオンチャネルα鎖のミスセンス変異の機能的解析2012

    • 著者名/発表者名
      上山久雄、村木早苗、豊田太、竹内圭介、扇田久和
    • 学会等名
      日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡市
    • 年月日
      20121215-20121215
  • [学会発表] An Adaptor Protein Afadin Regulates Lymphatic Vessel Development by Modulating RhoA Activation.2012

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi K, Majima T, Miyoshi J, Ogita H.
    • 学会等名
      American Heart Association
    • 発表場所
      Los Angeles, USA.
    • 年月日
      20121106-20121106
  • [学会発表] 正常遺伝子型を持つ1型2色覚の遺伝子解析2012

    • 著者名/発表者名
      村木早苗、上山久雄、山出新一、田邉詔子、扇田久和、大路正人
    • 学会等名
      日本臨床眼科学会
    • 発表場所
      京都市
    • 年月日
      20121026-20121026
  • [学会発表] 高分子キニノーゲン・ドメイン5とアクチニン-4との相互作用によるがん細胞の細胞接着阻害機構2012

    • 著者名/発表者名
      竹内圭介、 前田利長、 扇田久和
    • 学会等名
      日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌市
    • 年月日
      20120920-20120920
  • [学会発表] ホスホリパーゼA2グループ7(PLA2G7)の遺伝子多型とマクロファージにおけるアポトーシス誘導との相関2012

    • 著者名/発表者名
      前田利長、竹内圭介、高嶋直敬、藤吉朗、門脇崇、三浦克之、上島弘嗣、扇田久和
    • 学会等名
      日本生化学会近畿支部例会
    • 発表場所
      宇治市
    • 年月日
      20120519-20120519
  • [学会発表] L、M両錐体視物質遺伝子を持つ先天色覚異常-エキソン3の塩基多型ハプロタイプがスプライシングのパターンに影響する2012

    • 著者名/発表者名
      上山久雄、村木早苗、山出新一、田邉詔子、扇田久和
    • 学会等名
      日本生化学会近畿支部例会
    • 発表場所
      宇治市
    • 年月日
      20120519-20120519

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公開日: 2014-07-24  

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