研究課題
背景研究により申請者らは、がん遺伝子産物RasとそのエフェクターRafキナーゼとの直接結合を阻害する低分子化合物(2種類の母核構造A群、B群に分類)を獲得していた。A群化合物については、細胞内Ras-Raf結合阻害活性を確認するとともに、Raf以外のRasの標的分子RalGDS,、PI3K、さらにはRasの上流の活性調節因子(グアニンヌクレオチド交換因子)へのシグナル伝達についても、顕著に阻害することが確認された。また同化合物に関する、市販薬(ソレフェニブ)に匹敵する強力な抗がん作用、ならびに化合物の直接結合を証明するRasと化合物との複合体のNMRによる立体構造解析結果も合わせて、一連の研究成果を取り纏め、総合科学雑誌である米国科学アカデミー紀要に発表した。その結果、同成果は、Rasを分子標的とした抗がん剤の有望な開発例として、Nature Reviews Cancer(Burgess, Nature Reviews Cancer 13, 381 (June 2013))をはじめとする複数の科学雑誌にハイライトされるとともに、同年、新聞・TVなど国内外の報道各社に研究内容の有用性と社会貢献について多数取り上げられた。また研究成果に基づき、計算科学を導入してデザイン・有機化学合成したA群化合物の新規誘導体の中には、細胞レベルでより強力ながん細胞増殖抑制効果を示すものも複数認められたが、担がんモデル動物システムでの抗がん作用については、出発化合物と同等であった。これらの結果により、化合物のin vitroでの活性改善のみならず、生体における化合物の吸収・代謝などをも考慮した構造展開の必要性を含め、今後検討すべき課題が明確になった。
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日本放射光学会誌 放射光
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