研究課題
申請者が作成した胎仔型ライディッヒ細胞特異的EGFPマウス、他機関より譲渡を受けたSox9-GFPマウスを用いて胎仔期のライディッヒ細胞とセルトリ細胞を分取し、胎仔期精巣におけるテストステロン合成経路を明らかにした。胎仔期の精巣ではライディッヒ細胞がアンドロステンジオンを合成し、セルトリ細胞がアンドロステンジオンをテストステロンに変換することを明らかにし、論文として発表した。ジフテリア毒素の投与実験に関しては、特に新生仔期において、野生型のマウスに通常の投与量を投与した場合でも衰弱ないし死亡する個体が多かったため、時期によって投与量を増減する必要があり、至適な投与量を未だ検討中である。成獣に毒素を投与した場合、投与後3か月以降に一部の個体において精細管構造の不整や精子形成の異常が認められたため、今後実験の再現性をとり、さらに詳細な解析を行う予定である。胎仔型ライディッヒ細胞のトランスクリプトーム解析に関しては、胎齢14.5日、18.5日、生後10日、21日、56日の胎仔型ライディッヒ細胞における遺伝子発現プロファイルを、mRNA-sequence法により明らかにした。この結果、胎仔型ライディッヒ細胞が、特に出生後に大きく性質を変化させ、時期特異的な機能を持つことを示唆する結果を得た(投稿準備中)。特に、出生後早期から思春期前期にかけて、酸化的リン酸化や電子伝達系に関与する遺伝子の発現が上昇していたことから、胎仔型ライディッヒ細胞において、この時期にミトコンドリアの機能が上昇していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
胎仔期の精巣におけるテストステロン合成経路を解明し、論文として発表した。本論分は内分泌系の雑誌で評価の高いMolecular Endocrinology誌に掲載され、多くの反響を得た。ジフテリア毒素を用いた細胞破壊実験は、成獣期の個体に対しては至適な投与量を決定済みで、投与後3か月で一部の個体に精細管構造の不整や精子形成の異常といった有意な表現型を認めた。ただし、特に出生後早期の個体に関しては至適な投与量が不明であるため、今後さらに検討を行わなければならない。トランスクリプトーム解析に関しては、微量RNAを用いたmRNA-sequence解析に成功し、胎仔期~成獣期にかけて胎仔型ライディッヒ細胞における詳細な遺伝子発現プロファイルを明らかにした。これは世界で初めて明らかにされたものであり、その価値は高いと考え、現在投稿準備中である。
平成25年度は最終年度であるため、トランスクリプトーム解析と毒素による細胞破壊実験の結果から、胎仔型ライディッヒ細胞の出生後の機能を明らかにする。トランスクリプトーム解析の結果、胎仔型ライディッヒ細胞は特に出生後早期に時期特異的な機能を有していると予想されるため、出生後の各時期に至適な投与量を決定した後、細胞破壊を行いその影響を検討する。これらの結果と、既に得たトランスクリプトームの結果を詳細に検討し、胎仔型ライディッヒ細胞の出生後の機能を明らかにすることを目指す。
ジフテリア毒素の投与実験のため、引き続きマウスの繁殖のための管理費用、マウスの購入代金が必要である。また、細胞破壊の影響を詳細に解析するため、組織学的検討を行う他、電子顕微鏡による解析や組織中・血中のホルモン値の解析を委託解析として行う予定であり、このための費用が必要である。この他、国内外の学会発表のための旅費や、既に得たトランスクリプトーム解析を論文として発表するための英文校閲料、投稿料が必要になると予想される。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Mol Endocrinol
巻: 27 ページ: 63-73
10.1210/me.2012-1256
細胞工学
巻: 32 ページ: 158-163
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/seisaseibutu/