研究課題/領域番号 |
23590342
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
高橋 実 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00285024)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 補体 / レクチン経路 / トランスジェニック / MASP |
研究概要 |
当該年度において内因性MASP-1の生状と活性化機構の同定を目的として研究を実施した。具体的には生体中におけるMASP-1/3が補体成分D因子を活性化するメカニズムを解明するためにMASP-1に蛍光タンパク質であるeGFPと融合したキメラタンパク質(MASP-1/eGFP)を生体に発現するマウスを作製した。事前の実験においてMASP-1/eGFPはほ乳類の細胞株であるCHO細胞に発現させるとその蛍光により、その存在がフローサイトメトリーによる解析から確認できた。このキメラタンパク質をコードする遺伝子をレンチウイルス発現用のベクターに組み込んだ。またMASP-1の活性を有するMASP-1His(Hisは6xHis tag)もレンチウイルス発現用のベクターに組み込んだ。これらのベクターから組み換えウイルスを作製した。これらの組み換えウイルスを293細胞株に感染させるとMASP-1/eGFP及びMASP-1His共に発現を確認できた。大阪大学微生物病研究所との共同研究としてこれら組み換えレンチウイルスをマウス受精卵に感染させてトランスジェニック(TG)マウスの作製に成功した。現在、MASP1/3-/-マウスとの交配により、内在MASP-1/3を欠損したTGマウスを作製中である。さらにMASP1遺伝子の異常が3MC症候群という形態の異常を呈する疾患に関与する報告がなされた。研究対象であるMASP1の新規な機能に関して緊急性のある内容であったので、研究実施計画には記載していなかったが、研究を遂行した。その結果、IGFBP-5といわれる因子の活性化にMASP-1/3が関与する可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の研究目的として「MASP-1による補体D因子前駆体の活性化機構を明らかにすること」を記載した。23年度は「研究計画・方法」に記述したように(1)MASP-1またはMASP-3が血液中でD因子前駆体を活性化する機構を生化学的な手法を用いて明らかにする。(2)またウイルスベクター発現系を使い、MASP1/3KOマウスにMASP-1またはMASP-3を導入し、第2経路が回復するかを検討する、という目的を達成するために研究を遂行した。(1)に関しては23年度には達成するに至らなかった。これは新たな緊急性のあるテーマであるMASP-1およびMASP-3の3MC症候群への関与する機構に関する研究に重きを置いたためで、24年度で達成する予定である。(2)に関しては概ね予定通り達成できた。これはMASP-1/3を発現させたTGマウスを作製することに成功したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降の推進方策として「研究計画・方法」に記載した通り、(1)MASP1/3KOマウスの脂肪組織、および血中における脂質の代謝異常を調べること、(2)ヒトにおいてもMASP-1がD因子前駆体を活性化するのかを各因子の組み換え体を用いた生化学的解析とヒトにおけるMASP-1欠損症の検索を試行することを推進する。(2)に関しては既に3MC症候群にてMASP1遺伝子の変異が認められると報告されたので、3MC症候群の患者から血液を提供して頂き、この血液中の補体D因子の生状を調べる研究を推進する。また新たにMASP1遺伝子と3MC症候群との関連性をMASP-1またはMASP-3の新たな機能の検索を計画に加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度以降も研究費は研究計画を遂行するために主に消耗品等の購入、マウスの飼育費、得られた研究成果の論文作成、および国内外での学会発表に対する旅費に使う予定である。
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