研究課題/領域番号 |
23590344
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
多久和 典子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (70150290)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スフィンゴシン-1-リン酸 / G蛋白共役型受容体 / S1P2 / がん血管新生 / がん血行性転移 / 虚血後血管新生 |
研究概要 |
B16メラノーマ細胞をS1PR2KO/LacZノックインマウスおよび同腹野生型マウスに皮下注射あるいは尾静脈内投与を行い、肺転移と生存を比較した。S1PR2KO/LacZマウスでは、いずれのモデルにおいても転移巣の数が野生型と比較して有意に多かった。メラノサイトマーカーであるM562の発現で比較すると、前者の実験モデルで約3倍の増加が認められた。肺転移巣の血管新生関連成長因子・受容体・サイトカイン・マトリックスメタロプロテアーゼ等のmRNA発現レベルに大きな差は無かった。S1PR2KO/LacZマウスあるいは同腹野生型マウスの骨髄を野生型マウスに移植後、B16メラノーマ細胞を皮下注射にて投与したところ、S1PR2KO/LacZマウスの骨髄を移植した野生型マウスで転移巣の数の増大と転移巣内の腫瘍血管新生の促進を認めた。血管内皮マーカーCD31の発現もS1PR2KO/LacZマウス肺転移巣で有意に高かった。このことから、骨髄由来細胞のS1PR2が血行性転移を抑制性に制御することが示唆された。さらに、B16メラノーマ細胞以外の腫瘍細胞についても観察されるか否かを、LLC細胞について検討中である。 S1PR2KOマウスおよび同腹野生型マウスにおいて大腿動脈切除による血管新生モデルを作成し、血流測定、血管新生の免疫染色による評価により、虚血後血管新生がS1PR2KOマウスにおいて有意に促進されることを見出した。骨髄由来細胞の関与の有無を明らかにするため、S1PR2KOマウスおよび同腹野生型マウスの骨髄を野生型マウスに移植後、大腿動脈切除モデルを作成し、血管新生の比較検討を行った。S1PR2KOマウス骨髄由来細胞は野生型骨髄細胞に比べて虚血部位への動員が増大していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は宿主のS1P2が、腫瘍原発巣の増大と血管新生の抑制性に制御している(Du, et al. 2010)のみならず、血行性転移を抑制し、しかも骨髄由来白血球系細胞のS1P2が重要な役割を演じていることを明らかにした。また、腫瘍血管新生だけでなく、虚血後血管新生においても、骨髄由来白血球系細胞のS1P2が抑制性に制御していることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、S1P2による血管新生抑制の分子メカニズムを2つの実験系で明らかにする。腫瘍組織あるいは虚血組織中への骨髄からの動員と、動員された後に骨髄由来白血球系細胞にS1P2が血管新生関連分子の発現やMMP活性化を制御するか否かを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会出張旅費等を除くほとんどすべてを実験試薬などの消耗品に使用する予定である。
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