研究課題/領域番号 |
23590344
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
多久和 典子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (70150290)
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キーワード | スフィンゴ脂質 / 脂質メディエーター / 虚血後血管新生 / 末梢動脈疾患 / G蛋白共役型受容体 |
研究概要 |
近年、わが国で急増している閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患peripheral artery disease, PAD)は、下肢末端の虚血による潰瘍・壊疽から下肢切断を余儀なくされる生活習慣病であり、血管内カテーテル治療・血管バイパス手術・骨髄幹細胞治療などが実施されているものの効果は十分ではなく、有効な血管新生療法が期待されている。血漿中に豊富に存在する脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、5つのサブタイプから構成されるG蛋白共役型S1P受容体(S1P1R~S1P5R)を介して作用し、多彩な生物効果を発揮する。遺伝学的解析から、S1P1Rは胎生期血管形成に必須であること、S1P1R ・S1P2R・S1P3Rのトリプル欠損マウスでは胎生期血管形成の異常がS1P1R 単独欠損に比しより重篤であることが分かっている。マウス大腿動脈切除後血管新生のモデル実験系を用いた我々のこれまでの研究により、野生型マウスにおけるS1Pの虚血下肢筋肉内局所投与は、対照群に比べ、虚血後血管新生を有意に改善させること、主要なS1P産生酵素(スフィンゴシン キナーゼ1, SphK1)を高発現するトランスジェニックマウスでは虚血後血管新生が有意に促進されることを明らかにしている。 本研究では、あるS1P受容体が虚血後血管新生において如何なる役割を演じているかを、当該受容体欠損マウスとその同腹野生型で比較検討した。大腿動脈切除後の血流回復(ドップラー血流解析法)および血管新生(血管内皮マーカー免疫組織染色)は、当該受容体欠損マウスで有意に促進されていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
虚血後血管新生を抑制性に制御する受容体サブタイプを当該遺伝子欠損動物を用いて同定することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
虚血後血管新生の治療戦略として、当該受容体特異的アンタゴニストの効果の有無を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表の旅費のほかは実験に必要な試薬等消耗品の購入に充てる計画である。
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