研究課題/領域番号 |
23590345
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山元 康敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50405247)
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研究分担者 |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30291587)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Runx1 / 血球産生型血管内皮 / 造血幹細胞 |
研究概要 |
【研究の目的】造血関連転写因子であるAML1/Runx1がどのようにして、胎生期背側大動脈の血球産生型血管内皮から造血幹細胞が発生する過程を制御するのか、その分子機構を解明する。【研究実施計画】1)二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージングにより、造血幹細胞発生動態を可視化し、遺伝子改変マウスを用いてRunx1依存性分子を検索・同定する。2)"極性と密な接着を有する血管内皮が、Runx1により血管内皮間葉転換を介して造血幹細胞に形質転換する"との仮説を検証する。【研究成果】造血幹細胞発生時における血管内皮間葉転換関与の有無の検討を行った。野生型、Runx1ノックアウト(Runx1-/-)でのES細胞分化(胚葉体形成)の系を用いて、血管内皮間葉転換マーカー発現を『リアルタイムPCR法』にて比較検討を行った。結果として、分化開始後4日目に、Runx1-/-にて血管内皮間葉転換を促進する転写因子Snailの発現低下、間葉系マーカーのビメンチン発現低下、上皮系マーカーのE-カドヘリンの発現上昇が認められた。また、多分化能を有するマウス血管内皮前駆細胞株にて、分化した血管内皮から間葉細胞への可塑性、並びに脱分化過程でのSnail発現上昇が確認された。これらの結果は、ES細胞レベルで血管内皮間葉転換マーカー発現がRunx1依存下に有り、血管内皮レベルで極性と接着の喪失にSnailが関与している事を示唆し、上記仮説2)を強力に支持するものと考えられた。計画1)については、遺伝子改変マウス(Runx1:DsRed; Flk-1:GFPマウス)作製に必要なRunx1:DsRedマウス作製に先んじて、現在Runx1:GFPマウスが作製されつつある状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.平成23年度中に計画した、遺伝子改変マウス作製については未だその途上に有る。作製中であるRunx1:DsRedマウスに先んじて、Runx1:GFPマウス作製が進行しつつある。現在キメラマウスから生殖系列への移行を目指し、FACS並びに蛍光免疫染色等にてシグナル確認予定中である。2.一方、平成25年度に予定していた、"極性と密な接着を有する血管内皮が、Runx1により血管内皮間葉転換(Endothelial Mesenchymal Transition; EndMT)を介して造血幹細胞に形質転換する"との仮説検証計画については、ES細胞分化系(胚葉体形成)を用いて、直接的であれ間接的であれRunx1依存下にEndMTマーカービメンチン、血管内皮間葉転換(EndMT)促進転写因子Snailが制御されることが確認された。また、マウス血管内皮前駆細胞株にて、分化した血管内皮から間葉細胞への可塑性、並びに脱分化過程でのSnail発現上昇が確認された。これらの結果は、平成25年度計画の『Runx1依存性分子のスクリーニング・同定』を大きく推進する一助と成りうるものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
(平成24年度)平成23年度に引き続き、遺伝子改変マウス作製後、造血幹細胞発生動態を可視化する。【計画1:二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージング】マウス胎仔10.5日齢の背側大動脈血管内皮から造血幹細胞が発生する過程を、二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いて『生体内分子イメージング法』にて観察する。タイムラプスイメージにて、Flk-1陽性細胞から娘細胞の発生過程を観察し、血管内皮からの造血幹細胞発生が、形質転換あるいは不均衡分裂に因るかを検証する。【計画2:不死化血球産生型血管内皮細胞株、造血幹細胞株の樹立】Runx1発現により血管内皮から造血幹細胞が発生する分子メカニズムについて、 Runx1依存性分子を介する新規制御システムの可能性を検証するため不死化細胞株を樹立する。Runx1:DsRed; Flk-1:GFPマウスと不死化マウスを交配し、Runx1:DsRed; Flk-1:GFP; Tg(H2-K1-tsA58)+/-マウスを作製する。本マウス胎仔10.5日齢の大動脈を摘出・器官培養後、血管内皮を含む接着性細胞より純粋な血球産生型血管内皮細胞分画(Runx1陽性Flk-1陽性)、造血幹細胞分画(Runx1陽性Flk-1弱陽性~陰性)を『FACS』にて分離回収する。(平成25年度)平成24年度に引き続き、不死化血球産生型血管内皮細胞株、造血幹細胞株を用いて Runx1依存性分子を介する新規制御システムの可能性を検証する。【計画3:Runx1依存性分子のスクリーニング・同定】不死化した純粋な血球産生型血管内皮細胞分画より、非許容条件下で造血幹細胞に効率よく分化させる培養条件を確立する。造血幹細胞への分化前後の遺伝子発現プロファイル変化を『DNAチップ』にて検出し、『クラスター解析』にてRunx1依存性標的分子を検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究ではいくつかのマウス・コホートを維持し、かつ、遺伝子改変マウス作製のための採卵・掛け合わせをあわせると、おおよそ200~300匹のマウスを常時維持することを想定している。マウス購入費用は年間30万円、飼料をふくむ飼育のための経費は月平均約7万円、合計年間約100万円規模を試算している。 平成24年度には、二光子フェムト秒パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージングを行うにあたり、器官培養・全胚培養に必要な物品(培養皿、培養液、各種成長因子、各種血清、コラーゲンゲル等の各種試薬、培養液還流ポンプおよび各種チューブ類)並びに、必要な各種抗体(一次、二次抗体)類、また不死化血球産生型血管内皮細胞株、造血幹細胞株の樹立のために必要な(および遺伝子改変マウス確立確認時にも)FACS関連試薬(血清、成長因子、インターフェロン等)・抗体・必要物品(丸底チューブ、培養皿、セルストレイナー等)などが主たる支出となるものと考えている。加えて、クローニングのための分子生物学実験試薬やin vitro実験のための培養試薬が必要となるものと考えている。 こうした支出を勘案し、年間約250万円の予算を計上したい。
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