【研究の目的】造血関連転写因子であるAML1/Runx1がどのようにして、胎生期背側大動脈の血球産生型血管内皮から造血幹細胞が発生する過程を制御するのか、その分子機構を解明する。【研究実施計画】1)二光子フェムト秒光パルスレーザ走査型顕微鏡を用いた生体内分子イメージングにより、造血幹細胞発生動態を可視化し、遺伝子改変マウスを用いてRunx1依存性分子を検索・同定する。2)"極性と密な接着を有する血管内皮が、Runx1により血管内皮間葉転換を介して造血幹細胞に形質転換する"との仮説を検証する。【研究成果】1)独自に作成した遺伝子改変マウス(Runx1-GFPノックインマウス)では、胸腺細胞などにGFPシグナルを観察することが出来た。2)Endothelial-to-Hematopoietic Transition (EHT)により、血球産生型血管内皮から造血幹細胞が生じる際にはタイトジャンクションの解離が生じるが、Runx1遺伝子機能阻害によりタイトジャンクション蛋白ZO-1遺伝子発現亢進が認められた。本結果は昨年度までに報告してきた、EndMT関連転写因子Snailの発現低下、間葉系マーカーのビメンチン発現低下、上皮系マーカーのE-カドヘリンの発現上昇と共に、血管内皮間葉転換マーカー発現がRunx1依存下に有ることを示し、上記仮説2)を支持するものと考えられた。また、Runx1ノックアウトマウスES細胞における胚葉体形成モデルの網羅的遺伝子解析後に、リアルタイムPCR法により定量評価を行った。その結果、EndMT関連転写因子Snailのみならず種々の遺伝子群がRunx1依存性に発現変化する事が明らかになった。
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