研究課題
本研究では、がん細胞が肺に転移する過程において、転移先臓器である肺で、がん細胞が実際に到達する以前にどのような生体反応が起こっているかを分子レベルで理解することを目指している。腫瘍モデルマウスの研究から、腫瘍原発巣からのサイトカイン・ケモカインシグナリングにより、肺ではS100A8・S100A9および血清アミロイドA3(SAA3)といったタンパク質の発現亢進が起こり、肺血管でこれらのタンパク質レベルが顕著に上昇していることが判明している。いくつかのヒト肺がん細胞を用いて血清アミロイドの遺伝子発現を調べたところ、SAA2およびそのバリアントの発現が炎症性サイトカイン(IL-1b, IL-6)刺激によって上昇することが明らかとなった。さらに詳細な検討を行ったところ、これらのSAA2バリアントは酸化LDL受容体と結合しうることが明らかとなった。そこで、エンドトキシンの影響を避けるために、SAA2バリアントを動物細胞で大量発現させ、(HEK293細胞またはCHO細胞)そこから精製したものを実験に用いることとした。これに合わせて、標的タンパク質の部分配列を合成ペプチドによって構築した。結果から、SAA2バリアントが細胞表面上に発現させた酸化LDL受容体と結合することを見出し、さらに酸化LDL受容体細胞外ドメインとSAA2バリアントの結合定数を生化学的実験により決定することができた。またSAA2バリアントのモノクローナル・ポリクローナル抗体を用いた抗体カラム・ELISAシステムを新たに作成することにより、培養細胞上清のSAA2バリアントを定量することが可能となった。現在これらの研究成果をまとめたものを論文化し、学術雑誌に投稿中である。
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