研究課題/領域番号 |
23590350
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
三輪 正直 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (20012750)
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キーワード | ポリADP-リボシル化 / 翻訳後修飾 / エピジェネティクス / アクセプタータンパク質 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
In vivoにおけるポリADP-リボシル化のアクセプタータンパク質の同定については、すでにポリ(ADP-リボ-ス)分解酵素(Poly(ADP-ribose) glycohydrolase)のショウジョウバエにおける欠損変異体を用いて、2次元電気泳動により分離されたスポットの質量分析により、数種類のタンパク質がその候補として分かってきた。そして、それらのタンパク質がin vitroでもポリADP-リボシル化されるかどうかについて調べてきた。今回は、もっとも顕著に認められたタンパク質として同定されてきたショウジョウバエのAlcohol dehydrogenase (ADH)について調べた。大腸菌でショウジョウバエのADHを生合成させて精製後、ヒトポリ(ADP-リボ-ス)合成酵素1(hPARP1)を用いてin vitroにおけるポリADP-リボシル化反応を行った結果、現在の条件ではポリADP-リボシル化が検出できないという結果を得た。これは、用いた酵素がヒト由来のPARP1であったことによる可能性と、in vivo においては、各種の補助タンパク質が必要であるなどとin vitroにおける反応条件とは異なるためであるかもしれないとの可能性がある。例えば、従来は、ポリADP-リボシル化反応は、PARP1については、DNAの切断端が必要であり、今回のように、分解酵素の欠損によるポリADP-リボシル化タンパク質の蓄積は、DNAの損傷とは異なる可能性が大きい。今後は、ショウジョウバエのPARPを用いた実験による検証を行う必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先に述べたように、従来のDNA切断に依存したポリADP-リボシル化は、よく研究がなされているにもかかわらず、DNAの切断が無い状況下におけるポリADP-リボシル化については、極めて知見が乏しい現状である。そのため、in vivoにおいて、検出されたポリADP-リボシル化のアクセプター蛋白質は、DNA損傷の無い状況下で行われていると考えられるので、通常のポリADP-リボシル化のアクセプタータンパク質とは異なる可能性がある。 また、一方、ショウジョウバエのPARPを用いた検証は必要である。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroにおけるポリADP-リボシル化の検証が成功していないことは、必ずしもin vivoにおいて同定されたアクセプタータンパク質が間違っていることを意味しない。そこで、今回は、in vivoの分解酵素欠失変異体のショウジョウバエを出発として、その抽出液を精製し、ショウジョウバエのADHに対する抗体を用いてポリADP-リボシル化を外すアルカリ条件で作用させて、抗体で検出されるADHタンパク質が、もとの分子量に戻ることを証明することを主にしたい。また、ADHタンパク質のポリADP-リボシル化がショウジョウバエの神経変性の原因であるならば、ショウジョウバエ個体のADHの活性が低下していることが考えられる。ショウジョウバエのADH活性を測定する。 また、ショウジョウバエの検出系においては利用できる抗体なども十分ではないので、ヒトの細胞においてADHがポリADP-リボシル化されていないかどうかを調べ、ヒトにおけるポリADP-リボシル化のアクセプタータンパク質の同定を合わせて行って行きたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで得られた結果、及び問題点について、外国のこの分野の研究者とも打ち合わせ討議を行い、場合により共同研究によりこの問題を解決したい。そのために、実験に使用する消耗品のほかに、この方面の詳しい、NIHのDr. Mossの研究室との共同研究を提案し、打ち合わせを行いたい。また、2013年はポリ(ADP-リボ-ス)に関する国際学会がカナダで行われるので現状の報告とともにこの分野の研究者との討議を通して問題の解決を図りたい。そのために外国旅費としての使用をお願いしたいと考えている。
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