研究課題/領域番号 |
23590352
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 和広 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80241628)
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研究分担者 |
戸恒 和人 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (10217515)
金子 桐子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10545784)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | prorenin receptor / erythroid cells / erythropiesis / YN-1 / angiotensin / renin |
研究概要 |
プロレニン受容体は、レニンとプロレニンに特異的に結合する受容体であり、350個のアミノ酸からなる1回膜貫通型蛋白である (Nguyen et al., 2002)。プロレニンはレニンの前駆体であり、アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに変換する酵素活性がほとんどないと考えられてきたが、プロレニン受容体に結合することによって、レニンとほぼ同等の酵素活性を持つようになる。プロレニン受容体は、腎臓、脳、心臓、脂肪組織等様々な器官に発現しており、MAPキナーゼを介したシグナルによって、細胞増殖を刺激する。他方、レニン・アンジオテンシン系の構成因子であるアンジオテンシノーゲンやアンジオテンシン受容体は、赤芽球系細胞にも発現しており、アンジオテンシンIIは赤芽球の増殖刺激作用を介して造血を刺激していることが明らかになってきた。しかし、赤芽球系細胞におけるプロレニン受容体の発現の報告はないので、赤芽球系細胞であるYN-1細胞とYN-1-0A細胞を用いて、発現の検討を行った。 今年度の研究によって、プロレニン受容体が蛋白およびmRNAレベルで赤芽球系細胞であるYN-1細胞とYN-1-0A細胞に発現していることを明らかにした。YN-1-0-A細胞において、TGF-βの処理によって分化を刺激して、プロレニン受容体の発現をウェスタンブロット法と定量的RT-PCRにて検討したが、プロレニン受容体の発現に変化はみられなかった。他方、インターフェロン-γの48時間の刺激によって、プロレニン受容体蛋白の発現の有意な増加がみられた。インターフェロン-γによってプロレニン受容体mRNAの発現量に有意の増加はみられなかったので、プロレニン受容体蛋白の安定性の増大によるものと考えられた。以上の結果から、赤芽球系細胞に発現するプロレニン受容体が、ある種の貧血の病態に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロレニン受容体のmRNA、タンパクの発現検出系が順調に確立された。赤芽球系細胞であるYN-1細胞とYN-1-0A細胞が、本研究のに有用であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
造血刺激作用を有することが知られているアンギオテンシンIIや甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン)によるYN-1細胞におけるプロレニン受容体発現への影響について、現在検討中である。 血中プロレニン受容体に関する予備実験において、ウェスタンブロット法によって、ラット血漿では、29kDa可溶性プロレニン受容体タンパクを示すバンドがみられた。他方、ヒト血漿では、約100kDaの部位にバンドがみられ、ヒト血中においてプロレニン受容体タンパクは、なんらかの複合体を形成している可能性が示唆された。ヒト血漿においてみられる約100kDaのプロレニン受容体免疫活性物質の本態について、認識部位の異なるプロレニン受容体交替を用いて解析して、特異性の高いヒト血漿プロレニン受容体測定用のELISA系の確立に取り組んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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