研究課題/領域番号 |
23590357
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
天野 睦紀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90304170)
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研究分担者 |
貝淵 弘三 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00169377)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Rho / キナーゼ / プロテオミクス / シグナル伝達 / 細胞骨格 |
研究概要 |
本研究ではヒト疾患(循環器疾患や精神神経疾患等)の発症や進行における低分子量G蛋白質Rhoファミリーシグナル伝達系の役割を分子レベルで解明することを目的とする。特にRhoファミリーシグナル伝達系のリン酸化シグナルネットワークに注目して、Rho-kinase, PKN, MRCK, aPKC, PAKファミリー等のキナーゼについて申請者が開発したインタラクトームを基盤とした網羅的基質同定を行い、疾患発症・進行との関わりを明らかにすることを目指す。 平成23年度にはインタラクトームによるキナーゼの基質スクリーニング法の改良を行った。従来法では基質の相互作用蛋白質やキナーゼの制御因子など、直接の基質以外の蛋白質と思われるものが含まれており、さらに効率よく基質を特異的に検出するために、キナーゼ-基質複合体を形成させた状態でリン酸化反応を行った後にリン酸化ペプチドを濃縮・同定する方法を試みた(kinase-interacting substrate screening method (KISS法))。Rho-kinaseについて条件検討を行った結果、この方法により基質のみならずその基質のリン酸化部位同定まで一気に行うことが可能となった。得られた蛋白質の中には既知の基質が含まれており、また多数の新規基質候補蛋白質が得られた。新規基質候補の一部については、in vitroリン酸化実験を行い、実験を行った蛋白質のほとんどが実際にRho-kinaseによってリン酸化されることを確認した。PKN、aPKC、PAK7についても同じ方法により基質のスクリーニングを試み、新規基質候補を得た。以上のことより、今回開発したKISS法によりキナーゼ基質のスクリーニングを効率良く行うことが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はキナーゼ基質スクリーニング法の改良を試みて、キナーゼ-基質複合体を形成させた状態でリン酸化反応を行った後にリン酸化ペプチドを濃縮・同定するKISS法の開発を行った。その結果、Rho-kinaseについて効率的な基質のスクリーニングに成功した。さらにPKN、aPKC、PAK7についても条件検討を行い、実際にスクリーニングを行ったところ良好な結果を得られたことから、本法が有効であると考えられた。得られた新規基質候補の一部についてin vitroリン酸化実験を行い、実験を行った蛋白質のほとんどが実際にリン酸化を受けることも確認した。以上のことより、本年度研究開始時に立てた実施計画と目標はほぼ100%達成出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、本法によりRhoファミリーシグナル伝達系に関連するキナーゼの基質のスクリーニングを続ける。上述のキナーゼ以外については、それぞれのキナーゼ毎に最適化を試みる。 またRho-kinase等のスクリーニングから得られた基質候補蛋白質について、パスウェイ解析を行って重要なシグナル経路(疾患関連分子等)に注目し、in vitro、in vivoでのリン酸化解析、生化学的、細胞生物学的解析を行う。先行しているRho-kinaseの解析については、新規基質としてがん抑制遺伝子であるScribを同定しており、平成24年度にはRho-kinaseとScribの関連について解析を行う。同様に、他のキナーゼについても解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように、キナーゼ基質スクリーニングのための試料調製・質量分析による解析に必要な費用を使用する予定である。また、得られた候補蛋白質の解析のための生化学・細胞生物学実験のための試薬費等を使用する予定である。
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