研究課題
本研究では、疾患の発症や進行におけるRhoファミリーシグナル伝達系の下流のリン酸化シグナルネットワークに注目して、Rho-kinase、PKN、PAK等のキナーゼについて基質のスクリーニングを行い、疾患発症・進行との関わりを明らかにすることを目指している。Rho-kinaseの心臓における新規基質として同定したCARP/ANKRD1について、CARPがRho-kinaseによるリン酸化依存的に14-3-3と結合し、核から脱局在することを示唆する結果を得た。CARPは特発性心筋症に関連し、心保護効果を持つとされる転写補因子で、サルコメアと核に局在する。Rho/Rho-kinaseシグナルは圧負荷等による心肥大の増悪に寄与することが示されているがこれまでそのメカニズムは不明であった。本研究結果より、Rho-kinaseがCARPをリン酸化して核への移行を阻害することで、CARPの心保護効果を抑制している可能性が示された。Rho-kinaseはCARP以外にもMYL2やCSRP3、BAG3等の特発性心筋症関連蛋白質をリン酸化することを見出しており、圧負荷等によってRho/Rho-kinaseの活性が亢進した結果、これら一群の蛋白質のリン酸化が上昇することが心肥大に繋がると推察される。また、PKAがRho-kinaseをリン酸化することも示し、PKAとRho-kinaseの間にクロストークが存在することが示唆された。
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