研究課題
EPRAP/FEM1Aは、プロスタグランジンE2(PGE2)の特異的受容体の一つである、EP4受容体の細胞内ドメイン結合蛋白として近年同定された、新規の細胞内シグナル調節因子である。PGE2は、内因性の生理活性物質として、局所でマクロファージの活性化状態の調節に深く関与し、EP4受容体下流シグナルはマクロファージの炎症性 (M1型) 活性化を特異的に抑制する。我々は以前、EPRAPがこの抗炎症作用において中心的な役割を果たしていることを、培養マクロファージを用いた系で示した (Minami M, et al. J Biol Chem, 2008)。 マクロファージの活性化制御は、炎症性疾患のみならず、2型糖尿病や動脈硬化性疾患、悪性腫瘍など、難治性慢性疾患の治療標的となりうる。EPRAPは、炎症性刺激後の活性化を負に制御する、言わばマクロファージに内在する「ブレーキ」に相当し、EPRAPが介在する細胞内シグナル伝達機構(ネットワーク)の解明は、マクロファージの活性化や極性のメカニズムの理解に重要であるだけでなく、これら慢性疾患の新たな治療標的としても期待される。 本研究の目的は、これら慢性疾患の病態生理におけるEPRAPの機能的意義を明らかにすることである。具体的には、EPRAP遺伝子改変動物を用いて、肥満、動脈硬化、炎症性発がんモデルでのEPRAPの機能解析ならびにメカニズムの解明を行う。平成23年度は、当初の研究計画通り、EPRAP遺伝子改変動物、特に、遺伝子欠損マウスの系統樹立と、普通飼育条件下における基本的な表現型の確認を行った。さらに、これらを用いて肥満モデルマウスや発がんモデルの作成に取りかかるとともに、ワイルドタイプマウスにおける、このような疾患条件下でのEPRAP遺伝子の発現、分布について検討をすすめた。
2: おおむね順調に進展している
各疾患モデルの作成や、初期の表現型解析は極めて順調に進展しており、慢性疾患におけるEPRAPの興味深い機能が徐々に明らかとなりつつある。一方、様々な研究ツールは整いつつあるが、in vitroでの解析と検証は次年度以降の課題である。
当初研究計画の通り、疾患モデルにおけるEPRAP遺伝子改変動物の表現型解析をさらに進める。また、これら表現型のメカニズムの解明を、in vitroの実験とともに推進する。
平成23年度は、研究計画の中心である疾患モデルの作成と初期の表現型解析に注力し、その結果in vivoの研究はトラブルなく順調に進展した。一方、研究消耗品のうちin vitro実験用として想定していた予算については、研究の進捗状況を鑑み、モデル動物の解析結果をある程度踏まえた上で、次年度以降に熟慮し執行することが望ましいと考えた。これら平成23年度の繰越分を合わせて、十分な研究成果を得るべく、進捗など研究全体を俯瞰し計画的にかつ適切に執行する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Gut
巻: 60 ページ: 1494-505
Carcinogenesis
巻: 32 ページ: 1333-9
Int J Mol Med
巻: 28 ページ: 683-7