研究課題/領域番号 |
23590362
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
船越 洋 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40273685)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トリプトファン / セロトニン / キヌレニン / 情動 / トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ / トリプトファン 2,3-ジオキシゲナーゼ / ノックアウトマウス / 精神神経疾患 |
研究概要 |
トリプトファン(TRP)およびその代謝物は情動に重要な寄与をすることが知られているが、その分子機序は以前十分明らかとされていない。TRPは、主に3つの経路で代謝される。(1) セロトニン経路 (2) トランスアミネーション経路 (3) キヌレニン経路(KYN経路)。このうちセロトニン経路の解析は比較的進んでいるが、TRP代謝の約95%を担うKYN経路の解析は進んでこなかった。これは、KYN代謝の最初のステップを代謝する律速酵素が2つ(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ:TDOとインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ:IDO)その剤するため、in vivoでそれぞれ単独の酵素の意義を解析することが困難だったためである。私達はこれまでTDOのノクアウトマウス(TDO-KO)を作成する事で、(a) TDOが全身TRP代謝の中心酵素として機能すること (b) TDOが脳内のTRPトセロトニンのドミナントな修飾因子として機能すること (c) 海馬の神経新生を促進し生理的な情動を修飾すること、を明らかにした。本年は、IDO-KOマウスを用いて、インターフェロンによる抑鬱修飾の分子機序解析を進め、IDOが確かに抑鬱の修飾因子として機能することをconfirmしたことに加えて、臨床上肝炎時に使用される事が多いインターフェロンによる抑鬱惹起には、TDOによる血液中のTRP濃度の修飾が寄与している可能性を、肝炎惹起モデルを用いて解析した。また、家族性情動疾患の原因遺伝子の同定にも成功し、3次元立体予測構造解析を進めてその意義の解析も順調に進めた。さらに、TDOとIDOのダブルKOマウスの作成もすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでTDOとIDOの情動への寄与の解析が寿分進んでこなかったが、我々が最近報告したTDO-KOマウスの結果を皮切りに、世界中で解析を進める動きが出てきている。本年、世界に先駆けて、インターフェロンによる抑鬱惹起の分子機序としてIDOが重要である事をIDO-KOマウスでconfirmすることに成功した。さらにインターフェロンは肝炎患者に投与される事が多いが、その際抑鬱症状が出やすい分子機序には、TDOによる血液中TRPレベルの修飾作用が分子機序として機能している事を、TDO-KOマウスに肝炎モデルを惹起する事で示唆する事に成功した(金井、中村&船越, unpublished results)。これに加えて、ヒト家族制情動疾患の原因遺伝子の同定と3次元立体予測構造解析と遺伝子変異の意義の解析も順調に進んでいる。さらにTDOとIDOのダブルKOマウスの作成も順調に進むなど、当初の計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
行動解析を含む情動解析には、TDO-KOマウスとIDO-KOマウスのダブルKOマウスに加えてTDO-KOマウスとIDO-KOマウスのそれぞれの単独KOマウスも十分数確保する必要性がある。すでにクラシカルな交配による作成を進めているが、行動解析に必要な同じ週齢の十分数の動物確保には、より効率的な方法を用いた動物の準備が重要である。そこで、研究室にて技術を確認習得したものに謝金の形で協力を得て、生殖工学を用いた動物の計画的な繁殖を開始している。また、家族性の情動疾患の原因遺伝子としての同定にも成功している。この更なる発展のために、より多くの患者サンプルの確保が必要であり、その準備を進めている。 本年秋にはオーストラリアで国際トリプトファンシンポジウムおよび日本トリプトファン研究会のサテライトシンポジウムが開催される予定である。ここでの発表の機会に、国内外との共同研究を発展させることで、今進んでいる成果をさらに発展させていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物の繁殖のための動物関連費用やそのための生殖工学のための謝金として100万円~120万円を想定している。また、生化学・遺伝子工学関係に20~30万円,その他に旅費として約10万円を想定している。
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