研究概要 |
トリプトファン(Trp)代謝の中でキヌレニン代謝の重要性が報告されてきているが、依然としてそのcontributionの確定にはハードルがある。その最大のハードルは、Trpからキヌレニンへの代謝の律速酵素が2つあることである。1つは、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)で、もう一つがインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)である。我々は、両酵素の単独ノックアウトマウス(Tdo-KO)および(Ido-KO)を作成する事で、で両酵素を介したTrpーキヌレニンーNAD代謝系の重要性を解析している。また、両KOマウスのダブルKOマウス(Tdo/Ido-KO)を作成し、解析を進めた。すでにTDO-KOマウスでは全身の血液中のトリプトファン(Trp)がコントロールに比較して約10倍に増加する事を見いだして報告しているが、この上昇が食事で変化するかを解析した結果、トリプトファン食(0.17% Trp)では、血液中のTrpレベルがコントロールマウスより上昇していたが、一方で低トリプトファン食(0.06% Trp)では、血液中TrpレベルがTdo-KOとコントロールで同等であった(Maeta A. et al., International Journal of Tryptophan Research, in press)。キヌレニン代謝物であるナイアシンは、Namを介して体の成長に寄与すると考えられるが、その過程でTDOの意義を見るために、TDO-KOマウスのナイアシン欠乏食の影響を評価した。その結果、ナイアシン欠乏食においても短期間であれば、コントロールマウスと比較して体の成長に差がない事が明らかとなった(Terakata et al., J. nutrition, in press)。現在生殖工学を用いてダブルKOマウスを作出し、更なる解析を進めている。
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