本研究宇代表者はこれまで小胞体ストレス経路を中心に、細胞が細胞内外のストレッサー刺激に対してどのように応答し、細胞内ホメオスタシスをどのように維持しているか、また、細胞機能が維持不可能な場合には、周囲の細胞への悪影響を防止するために、アポトーシスにより自らをどのように処理しているかについて研究を行って来た。その中で、様々な細胞内外からのストレッサー刺激下において、小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、核という細胞内小器官の相互作用により、ストレス応答が行われる事を明らかにしてきた。また、最近、小胞体ストレス応答だけでなく、ゴルジ体ストレス応答や、ミトコンドリアストレス応答が注目を集めている。そこで、本年度の研究では、ミトコンドリア機能異常が引き金を引いたストレス応答において、小胞体ストレス経路がどのような役割を果たすのかを明らかにするために、まずミトコンドリアに局在し、ミトコンドリア機能の維持に関与する可能性のあるタンパク質に注目し、その構造機能解析を行った。steroid receptor RNA activator (SRA)は、ミトコンドリアにおいて転写後のタンパク質合成の過程に関与し、ある種のミトコンドリア病に関与するとされている。このSRAの下流に位置し、ミトコンドリアタンパク質である可能性が高いとされるタンパク質群が他の研究者により報告されているが、そのうち、研究代表者らは、解析が進んでいなかったTransmembrane protein 65(TMEM65)に注目し、解析を行った。TMEN65は、培養ほ乳類細胞においてノックダウンを行ったところ、細胞の酸素消費速度および解糖系に影響を与えた。また、TMEM65が、ミトコンドリアの内膜タンパク質である事を証明した。さらに、TMEM65欠損の各細胞内小器官への影響について解析する予定である。
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