研究課題
我々は、髄液中の一群のタンパク質が、血清では見られないユニークな糖鎖修飾を受けていることを見出した。これらの“髄液型”糖タンパク質は中枢神経系で生合成されていると考えられたため、中枢疾患マーカーになることが期待された。本研究では、これらの分子のアルツハイマー病マーカーとしての可能性を検討し、有望なマーカーを見出した。髄液中における新規マーカーはアルツハイマー病で有意の上昇を示した(p = 0.00017)。本年度は、糖鎖アイソフォームのハイスループット測定法として、糖鎖結合性タンパク質であるレクチンと抗体を組み合わせた新規測定方法を開発した。いわゆる“もの忘れ外来”を受診する患者は、認知障害の程度により、(i) 正常域、(ii) 軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)、(iii) アルツハイマー病(AD)の3段階に分類される。これらの患者を年余にわたって観察すると、正常域から軽度認知障害、さらにはアルツハイマー病へと進行する例があるため、見出された新規診断マーカーが進行度マーカーとなり得るか否かを検討する予定である。この実証のためには、MCIからADに進行したグループ、および数年以上MCIに留まったグループの2群の解析が必要であるが、共同研究者より髄液試料を収集中である。製薬会社によりアルツハイマー病治療薬が開発され臨床試験が行われたが、有効性は実証されなかった。70~80%の神経細胞が死滅したAD状態(MRI上脳萎縮が認められる)からの回復は難しいと考えられる。治療薬は、神経細胞死が軽度(例えばMCI)の時期に投与されるべきである。しかし、現状ではアルツハイマー病の早期診断は難しい。本研究によって見出された新規マーカーが早期診断に応用され、治療開始の早期化に貢献できることが期待される。
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Glycoscience: Biology and Medicine
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J. Biochem.
巻: 154(3) ページ: 229-232
10.1093/jb/mvt065